第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
ツンっ…と 小野寺の唇に
杏寿郎がぶどうの粒を押し付けて来て
これを食べるべきなのかと
小野寺が戸惑ってしまって居ると
戸惑っている間に
スッとそのぶどうが自分の唇から離れて
「どうしたんだ?小野寺。
食べると言ったんじゃなかったのか?」
どきどきと自分の胸が騒がしい
こんなにこの人は
色気がある人だっただろうか?
私が知っている 杏寿郎さんとは
大凡に別人の様な そんな色気を感じる
指先でその 小野寺の唇に
押し付けていたぶどうの粒を
指先で弄ぶと
「なら、これは俺が食べよう」
「えっ、でも、それっ…は」
思い切りさっき 唇に押し当てたやつ
と言うよりも先に
杏寿郎の唇がぶどうに触れて
少し開いた唇から チラッとだけ
見える舌が その表面を舐め取って
ぶどうの皮の表面を舐める
その表情から 目が離せないでいて
只ならぬ 色気を感じてしまう
ちゅ…と音を立ててすすると
そのまま 口の中に放り込んだ
ごくん…と それを彼が
咀嚼して飲み込む その様に
瞬きも忘れて 見惚れてしまていて
「ん?どうした?そんなに見つめて。
そうか、やっぱり食べたかったんだな?」
そう言いながら 杏寿郎が
もう一粒 ぶどうを房からむしり取ると
「欲しくは…ないか?これが」
ゴクッとその問いかけに
思わず固唾を飲んでしまった
ぶどうの味は…さっきも食べたから知ってる
でも 目の前のこの人が
私に食べないかと勧めて来るぶどうは
同じぶどうなのに…何て甘美な
まるで 禁断の果実の様に思えてしまって
その味を…知りたいと 好奇心を刺激される
「食べないなら、俺が食べてしまうが…」
そう言いながら自分の口元へ
そのぶどうを引き寄せると
勿体ぶったかの様にして 唇を寄せる
チロッとその皮に舌を這わせて
ぶどうの粒を弄ぶだけで
自分の口に入れる様子もない
「食べるか?小野寺」
そう訊ねてから口に放り込んで
もぐもぐと咀嚼する
「あの…、私にも…そのぶどうを…1つ」
そっと顎に手を添えられてしまって
クイッと顎を引き上げられる
「なら、俺が食べさせてやろう」
そう言って 唇に新しいぶどうを
押し付けられるが
控え目に恥ずかしがって開いた口には
当然 入らなくて