第54章 スルタンコラボ企画 中編 お相手:冨岡義勇
一瞬 魔法か何かなのかと
驚いてしまった
晩餐会の会場であった食堂から
中庭に移動すると
そこには絨毯の上に
夕食の用意が出来ていて
「いつの間に?」
「王宮の中には、隠し通路があるからな
もしも、攻め込まれた時に使う
脱出路的な意味もあるが、召使いが
こうして主の先回りをするのにも使うものだ」
石造りの整えられた中庭には
いくつもの池が点在して居て
その池には蓮の花が咲き乱れている
大きなレリーフが施された壁面には
大きな太陽が描かれており
豊かな水が 滝になって常に池に
向かって注がれており
ほのかに湯気が立っており
「あの…、この池の水は…」
「ああ、気が付いたか?
その中に手を入れてみるといい」
杏寿郎にそう促されて
小野寺が チャポッと
池の水の中に手を入れると
「温かい…、お湯?」
「草原には温泉は無いのか?」
「温泉?温泉とは何ですか?」
「地中深くから、湧き出るお湯の事だ
熱湯が湧き出る温泉もあれば、
水の様な温泉もあるがな」
「沸かさなくてもお湯が使えるのですか?
それは凄いですね!驚きました」
興奮気味に小野寺が話して
杏寿郎がくすっと笑った
「足を浸けてみるといい、
本当に夫婦になっているのなら
ここで一緒に入ってもいいんだがな。
まぁ、それは今は出来ないが…」
お湯で身体を洗ったりなんて
草原での暮らしなら 毎日なんて
とんでもない 普段の生活に
使う水だって 汲みに行かないといけないのに
「どうだ?悪く無いだろう?」
「温泉…、気持ちいい…です」
お湯の中に浸けている足を
ゆらゆらと小野寺が動かして
「このまま、食事の続きでもするか」
そう言って沢山の果物が
盛り合わせてあるカゴを取って
その中に入っているリンゴを杏寿郎
手に取ると シャリと音を立てて齧る
「何か食べるか?」
「えと…、でしたら、ぶどうを…」
その小野寺の言葉に
杏寿郎がカゴの中からブドウを取り出して
その房に付いた 大きな粒を一粒
自分の手に取ると
受け取ろうとして出した
小野寺の手にそれを置くのではなくて
「俺が、食べさせてやろう」
「じっ、自分で…食べられます…からっ」
「何、遠慮は要らんぞ?
口…を開けるといい」