第13章 銀の流れる川 後編 お相手:竈門炭治郎
「俺より先に、
しのぶさんは気付いてたみたいですが……」
「そうですか、なら良かったです。
では、私は戻りますね。
おやすみなさい、炭治郎君」
「あ、はいっ!ありがとうございました!
しのぶさん……って、もう、居ないか…」
でも 帰ってからずっとあった
俺の心の中の モヤモヤしたものが
スッキリと晴れていたのは 確かだった
「みくりさん……、俺、……みくりさんが」
炭治郎が自分の心臓の上に
右手を当てて
そっと目を閉じた
みくりさんの顔を 思い出してみる
もっと みくりさんの
匂いを嗅ぎたいとか
近づきたいとか
触れたいとか
そんな感情もある
でも あの笑顔を見たいとか
俺に向けて欲しいとか
頼って欲しいとか
そんな感情もある
会いたくないって
ここに来る前は思ってたのに
明日みくりさんと
どんな顔をして会えばいいのかって
でも しのぶさんと話をして
今は むしろ
みくりさんに 早く会いたいし
ちゃんと謝りたいし 許してもらいたい
それもあるけど
会いたいって 顔が見たいし
声が聞きたいって
この 感情が
この 気持ちが
「……好きって、事……なのか」
炭治郎がそう 呟いた
帰って来たと思ったら
思ったで 炭治郎からは
今度は 欲情とか劣情とかじゃなくって
なぜか その音が 恋の音に変わっていて
愛と欲は紙一重とも言うけど
このガチガチに頭が固い 炭治郎が
そっちの方向から先に来てしまった
その相手がどんな人なのか
俺も気になってしまった
そして 次の日
午前中の間はみくりさん達はまだ
蝶屋敷には来ておらず
そのまま午後になってしまった
炭治郎がみくりの匂いが
こちらに来るのを感じて顔を上げた
この匂い 間違いない
みくりさんの……匂いだ
ドキドキと心臓が五月蠅い
静まるように上から手で
炭治郎は自分の胸を押さえつけた