第53章 春と言えば…? 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
杏寿郎の誘いを断って来たんだけど……
「そんな顔をするな、みくり。
百聞は一見に如かず…だぞ?
こう見えても。これも、見た目と
中身が違うかも知れないだろう?」
届いた ギネスのロゴの入ったグラスを
杏寿郎が受け取ると
そのひとつをみくりに差し出して来て
グラスの中を満たしているのは
真っ黒の液体だった
「まぁ。飲め無さそうなら、
俺が飲むぞ?だから、安心するといい」
杏寿郎がグラスをこちらに向けて来て
「乾杯」
「か、乾杯」
チンッとグラスを合わせて
両手に持っているそのグラスの中身の
真っ黒の液体をじっと眺めて
恐る恐るに 自分の鼻を近付ける
「…………!?」
驚いた様な表情をしている
みくりの方を
杏寿郎が笑みを浮かべながら見て来て
「飲めそう…だろう?そう思わないか?」
その真っ黒のビールの匂いは
驚く程の衝撃でしか なかった
「何?これっ、この所、色んなビール
飲んだけど。明らかにこれは別物。
ビールじゃない、全然違う。
コーヒーの匂いがする、それとワイン。
赤ワインの匂いがする。え?何で?」
クンクンとグラスの中のギネスの匂いが
不思議そうな顔をしながらみくりが
匂いを嗅いでは首を傾げていて
「飲んでみるといい、驚くぞ?」
そう言いながらゴクゴクと喉を鳴らして
そのビールを杏寿郎が飲んでいるのを
ぼんやりとみくりは眺めながらに
百聞は一見に如かず……か
確かに飲まず嫌い…であるのは
紛れもない事実だし
グイっとグラスを傾けて
その黒い液体を喉に流し込んだ
ん………?
あれ? 全然 苦くない…や
ん? あれ?
んんっ??
苦くない……だけじゃなくて
匂いを嗅いだ時に感じた
濃いいコーヒーの香りと
深い 赤ワインみたいな香り
「何っ、これっ?
ビールじゃないじゃんっ。
赤ワインコーヒーで割った奴、
匂いもそんな匂いだけど、味も
そんな味がするっ、凄いコーヒー」
「ワインコーヒーと言う、飲み方が
あるくらいだからな。赤ワインと
コーヒーは合うぞ?今度
ワインコーヒーとギネスの
飲み比べでもしてみるか?
美味いだろ?ギネス」
みくりがむぅーっと顔を顰めていて
「アイスコーヒーが、
好きな人は好きだろうね。
でも、これは別枠だなぁ…確かに」