第53章 春と言えば…? 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
そのいつもと様子の違う彼女に
若干の戸惑いを感じつつも
どうにも 自分の心が
さざめき立って落ち着かないでいて
どうにも 自分の目の前にいる
彼女を自分の方へ引き寄せたい
自分の腕の中に閉じ込めたいと言う
その感情が 酷く渦巻くのだ
だが 同時に不安になる
こうなっている時の彼女は
俺の知っている みくりとはまるで
別人だから…
「みくり?」
ぼんやりとしていた
みくりがハッとして
「杏寿郎?ごめん、なんか
ちょっと、ぼんやりしてたみたい……」
「俺が…、みくり。
傍に居て欲しいと思ってるのは
君の方…だからな?それだけは
何があっても、勘違いしないでくれるか?」
目の前のみくりが
きょとんと大きな目を
更に大きくしていたから
「……何でもない、忘れてくれ」
きっと 私が薄々に感じてる不安の
その理由を杏寿郎は気付いているからだ
時々 私と彼が思い出す
自分じゃない誰かの記憶の片鱗
その記憶の片鱗には必ず
私の記憶の片鱗には杏寿郎が居て
杏寿郎の記憶の片鱗には私が居るのだ
ふとした瞬間に 部分的にしか
思い出せないけど……
その一瞬の 誰かの記憶は……
どこを思い出しても…
杏寿郎の事が… 好きだって気持ちで
溢れているから……
不安になる…時々
杏寿郎が必要としてるのは
私の方じゃなくって あっちの…
記憶の中の方の私なんじゃないかって
不安になる…時々
私の中にある この杏寿郎への好きが
私の好き…って気持ちのハズなのに
自分の好きなのか…が
時々……不安で仕方なくなる…
その小さな欠片を思い出す度に
自分が少しずつ失われる様な
そんな不安を感じる…
「大丈夫か?みくり。
今日はあまり無理をしない方が
いいんじゃないのか?」
至近距離で顔を覗き込まれて
思わずそのまま下がってしまって
「大丈夫だから、杏寿郎は
心配性なんだよ。もう平気だから」
「BBQの材料お届けにあがりました。
こちら、今夜のご夕食のセットとなります。
こちらダッチオーブンの方に
メインのハーブチキンの方、
セットしてありますので。
焚火台の方で1時間、じっくり
火を入れて頂いて、その後30分
上に炭を置いて、焼いて頂く形になります」