第52章 春と言えば…? 中編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
「杏寿郎…、早く帰ろうよ。
私が、我慢…出来てる内にっ
帰りたい…んだけど…ッ」
「確かにここで。わんわん泣かれると
俺が泣かせたみたいになるからな。
これだけ、一緒に飛ばそう。風船」
「風船、あの西井君の気遣いのやつ!」
さっきまで嗚咽しながら
大泣きする感じだったみくりが
一瞬で気持ちを持ちなおして来たので
偉大だな 西井君の風船と
あのどうにも ぼんやりとした彼に
杏寿郎は心の中で感謝した
風船の先を2人で持って
青空に放つと
その風船が見えなくなるまで見送る
「どこ…行くのかな?」
「さぁな、風次第だろうがな」
隣で空を見上げていたみくりが
杏寿郎の方へ向き直ると
「ねぇ、明日さ。帰りにさ
お酒買って帰ってもいい?」
「酒ってまさか……」
にこっとみくりが笑って
「うん、ビールも美味しかったけどさ。
渡辺君が造ったお酒、飲んでみたいなって。
って、杏寿郎?どうしたの?そんな顔して」
杏寿郎が信じられない物を
見る様な顔をして見て来て
「6年分の後悔は、そんな一瞬で
どうにかなる物なのか?」
「え?何で?もう彼、結婚してるじゃん。
それでいいじゃない?」
そうあっけらかんとみくりが
答えて来て
「女性は上書き保存、
男性は名前を付けて保存……」
ギロッとみくりが杏寿郎の方に
鋭い視線を向けて来て
「ん?どうするの?杏寿郎。
私が、拡張子を変更して保存型だったら」
良く女性は過去の恋愛を
上書き保存すると言うが
みくりの言う
拡張子を変更して保存する女性は
いい男フォルダと
ダメな男フォルダを持っていて
別れた男をどちらかに保存するタイプらしいが
「まぁ、君が上書き型だろうが、
一時ゴミ箱型だろうが、
拡張子を変更して保存型だろうが。
俺はそこに保存される予定はないからな」
杏寿郎が腕組みをしながらそう言うと
うんうんと頷いて
「何それ?
まぁ、杏寿郎らしいけどさ。帰ろう?」
そう言って 手を繋いで
ネモフィラの咲き乱れる丘を後にした
「私ね…、杏寿郎といつか
ふたりで、ネモフィラの花をね
見たいって思ってた…。からさ」
「あの時、俺が君に
言った事…が、叶ったんだな…」
「待つ、って言ってくれたもんね」