第13章 銀の流れる川 後編 お相手:竈門炭治郎
俺はあの状況の中で
あの女の人達とみくりさんを
ほったらかしにして 山を降りて
その上
ここまで逃げ帰ってしまったのだから
失礼極まりない……事をしていまっていて
「明日位に、みくりさんがここに来るそうです。
先日の任務で鬼に拘束されていた女性を数人、
ここへ連れて来るとの事でした」
「鬼の子を…身籠ってる……んです、
その人達は…」
「鬼の子を身籠る?おかしいですね、
鬼は戯れに女性を犯したりすることは
あり得なくない話ですが、鬼からすれば
人間は餌ですから、最終的に食欲が勝ちますし?
拘束までして、身籠らせる事に酷い拘りのある
鬼だったんでしょうね」
「あり得ない事では、ないんですか?」
「でも、それはあり得ているのでしょう?
ならば、それが事実です。それだけですよ」
そう言ってしのぶが笑った
意味のあり気な笑顔で
そうか それもそうだ
鬼からすれば 人間は餌
食べ物でしかない
それなのに わざわざ身籠らせて
その状態で食べずに置いて置いて
あの鬼は 何がしたかったのか……
あの鬼が
かつて 人だった頃に……
自分の子でも亡くしたのだろうか?
その深い悲しみと
子供を亡くしたと言う事だけが
鬼となった後も ずっと残っていて
それを何度も 望んでは
子供が欲しいと 望んでは
失うのを あの鬼は
繰り返して居たのかもしれない…
悪夢の様に
何度も 何度も…
それを 繰り返して
やはり 鬼は
悲しい 生き物だ
どこまでも
「炭治郎君?大丈夫ですか?顔色が悪いですよ」
しのぶが心配そうな顔をして
炭治郎の顔を覗き込んでいた
しのぶさんからも 凄く
いい香りがする 女の人の香り
でも 俺がみくりさんから感じた香りとは
また 違う香りだった
「すいません、しのぶさん。大丈夫です」
「最後にお返事を返さないと行けないので、
確認を取りたいのですが、みくりさんに
炭治郎君がここに居るってお伝えしても?」
しのぶが診察室の窓辺に
視線を送ると そこには手紙を待つ
一羽の鴉の姿があって
その鴉はきっと みくりさんの鴉なのだろう