第52章 春と言えば…? 中編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
裏手には奥へと屋根付きの
養殖池があってその中に
いくつかカゴが浮かんでいる
手前の池の中をみくりが
指をさして杏寿郎に見る様に促すと
数十…いや 数百?は
居るんじゃないかと思うぐらいな
魚の影が移動するのが見える
「杏寿郎はさ、
黄金のイクラ知ってる?」
「おお、みくりちゃん
さっき、伸介の父ちゃんから
連絡貰ったよ。食ってくんだろ?
結婚するんだってな、その人が
結婚する相手?俺はここで
代々、ヤマメの養殖してるんだが。
黄金のイクラの話は、俺からしねぇとな」
そう言って 更に奥の池の方を
持留が顎でしゃくると
「普段は、見せねぇんだがな。
幻って言われてる尺ヤマメってぇのが
居るんだわな、その尺ヤマメ
ってえのになるには2年育てるんだ」
そう言いながら細い通路を
持留が進んで行って
奥にある池のある場所へ移動する
明らかに池の大きさが違う
その中で泳いでる魚の影の大きさも
「あの、ヤマメが成長すると
ここまで育つのか?マス……?」
「ヤマメはサクラマスの事だよ」
鮭とマスは似てるから
当然卵も似てる訳か
「それで、黄金のイクラなのか……」
「ここまで…、来るのは中々だったがな」
「そうだよ、ヤマメはすぐに
死んじゃうから養殖が難しいんだよ」
「っと、刺身食いに来たんだよな?
あっちは立て込んでるから、
今日も、みくりちゃんのお陰で
予約が埋まっちまってるんだ、
かなり先までな」
違う違うと言いたげに
みくりが手を振って
「私がどうこうじゃないって、
私は意見言っただけだって、
後は成瀬さんの宣伝の効果と
持留のおじちゃんのヤマメの美味しさ」
「よせやぃ、褒めても
ヤマメぐらいしか出ねぇぞ?」
「いえ、それで十分」
池に浮かべて居る
カゴを持留が手繰り寄せると
カゴから適当なヤマメを2匹出して
流し台に上に置いてあった
木のまな板の上で
鮮やかな手つきで
ヤマメを捌いてくれる
「本日の食材は…、
こちら、新鮮なヤマメ…って事で
それではこちらを捌いて行くッだよ?」
だから どれだけ
気まぐれクックなんだと
杏寿郎は思いながら
あっという間に捌かれた
まな板の上の薄っすらピンクの
その刺身がキラキラと輝いて見えて
「正に命を頂く…んだな」
「あ、箸ねぇわ。待ってろ」