第51章 春と言えば…? 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
「どうだ?エールビールの香りは」
そう嬉しそうに尋ねて来る
杏寿郎にみくりが顔を顰める
「ビールなんて、
原材料は、麦とホップと水でしょ?
材料一緒じゃん。
ビールの匂いしかしないよッ」
そんな違いなんて分かるかと
言いたげに不満そうに返しつつ
そのみくりの表情が変わる
「あれ?ビールの匂い…ん?
ちょっと…不思議な匂いがする。
ビールのビールですっ!…って
主張する匂いじゃない匂いする」
「じゃあ、飲んでみるといい」
乾杯とお互いのグラスを合わせて
その琥珀色のビールに口を付ける
一口 含んで 飲むと
驚く程に苦味がない
「苦くない…、でも普通のビールみたいな
そんなキレがある訳じゃない、ふんわり
してる感じ、なのに、飲んだ後に
爽やかな香りが口から鼻に抜けて行くみたい」
その 口から鼻に抜ける
爽やかな香りの正体……
「君の好みの味だと思うんだがな、
好きだろう?レモン」
そうだ レモン
レモンみたいな 香りが残るんだ
ゴクゴクと 不思議そうな顔をしつつも
その よなよなエールを飲んでいたので
「うん、確かに…ちょっとレモンぽい。
レモンの匂いがする、苦くないビール。
ん?ビール?ビールぽくないな、
不思議な感じがする」
そう言いながらも 更に飲んでいるので
「でも、その顔を見ると不味くはない
って顔だがな。美味いか?エール」
「不思議な味と匂い」
用意されていた春の野菜の
夕飯を食べながらも
不思議そうな顔をしながら
ビールを飲んでいるみくりに
杏寿郎が声を掛けて来る
飲んでいるのかと思えば
グラスに鼻を近付けて
その香りだけを嗅いではグラスを置いて
また その香りを確かめる様に嗅ぐ
「みくり、何してるんだ?」
「違うの、最初に嗅いだ時は
あったんだよ、確かにあのビールって香りが。
今はそのビールって香りがないの、
これって香りが飲んでる内に変わるの?」
空になったグラスに
置いていたスプリングバレーを注いで
杏寿郎がみくりの前に差し出して来る
「きっとこっちは、君は苦手だろうな」
「苦そうな匂いがするけど?」
「確かに、苦味もあるが、それと
同じぐらいに甘味もある……。
それでいて重みもある深い味わいだな」
そう言いながらふっと
杏寿郎が笑みを浮かべて来る