第51章 春と言えば…? 前編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
3人の謎な人物の中で
一人だけ さん付けで呼んでいた人物だ
『はい、はい。今ですか?
ええ、はい、大丈夫です。
でも、成瀬さんは大丈夫なんですか?
いつも、お忙しいって、
おじさんから聞いてます』
それに喋り方と声……誰だと
心の中で杏寿郎が突っこんでしまったが
『でも、そんな悪いです…。
え?そんなっ、ええ、はい。
でも、そんな良くして貰っちゃって。
いえ、私は何も…自分が思ってる事
言ってるだけ……なので、そんなっ。
お礼なんて、頂く程の事は何も……』
そろっと通話をしている
みくりの背後に回ると
ふうっと空いている方の
みくりの耳に息を吹きかけた
『うひゃああっ、もうっ!
ちょっと、突然何するのよッ!!
あっ、いえ、すいません、大丈夫ですッ。
(杏寿郎ッ、ちょっとっ!
何してんのっ、驚いたじゃないのっ)』
通話をしながらもみくりが
こちらに不満を訴え掛けて来て
俺に怒ってる口調からの
余所行きの声へのスイッチの
切り替えの瞬間が見れて
なかなかに面白かったが
「みくり。俺は先に風呂に
入ってるからな、話が終わったら
一緒に入ろう。待ってる」
そう言い残して バタンと
寝室のドアを杏寿郎が締めて行って
電話の向こうからの言葉に
『ええ、多分…そうだと思います。
そうだと…、良いのですが……
はい、また、土曜日に…はい』
ぷつっと通話を切ると
慌ててお風呂に入る用意をして
みくりが服を脱ぐと
凄い勢いで
浴室のドアを全開にして来たかから
「えっち」
杏寿郎がそう白々しく言いながら
自分の身体をその手で隠した
「えっちもクソもないでしょ?
さっきのアレ、わざとでしょ?
ちょっと、返事してよ、杏寿郎」
「しない」
そう言って 杏寿郎が
こちらから顔を逸らせて来て
「説明ぐらい俺に、してくれても
…いいんじゃないか?」
「成瀬さんの事?
成瀬さんはおじさんの
同級生だよ、青年実業家なの。
地元を盛り上げる為の活動とか
企業をね、色々としてる人」
「おじさんの同級生だと言う、
その成瀬さんとやらは、どうして
君にそこまで肩入れするんだ?
随分と、優遇されてる様にあるが?」
はぁっとみくりがため息を付くと
ぽりぽりと自分の頬を掻いて
「聞きたい?その理由」