第12章 銀の流れる川 前編 お相手:竈門炭治郎
ドサッ ドサッ……
それを繰り返していると
村人からは 私の姿が見えないが
次々に周りの人間が倒れて行くのは
分かるだろう
最期に 一人だけが残って
ガラン 手に持っていた農具を落として
地面に頭を擦りつけて許しを乞い始めた
元々私は ここの村の人間を
どうのこうのしに 来た訳じゃない
鬼狩りが仕事なのだから
あくまで 村の事情には
踏み込めないのだ
だけど ここに彼女達を 置いては……
「彼女達の、身柄は私が引き受けますので。
もう、この集落とは縁を切ります、いいですね?」
ブルブルと震えている男にそう一喝すると
何度も何度も頷いた
自分の後ろにいた
女の人達に今度は言った
「残りたいのなら、残っても……
ここに居ても、どうなるか位は、分かってると
思うけど……?選んでもらっても?」
私は置いたままにしていた
自分が着ていた隊服を
空き家まで取りに行って
その場に戻ると
そのまま 集落を抜けるのを決めた
5人と共に 集落を出た
身重の人を連れて あの道らしい道のない
山道を降りるのか
せめて炭治郎君が居てくれたらと思ったが
炭治郎君はすでにあのまま
ものすごい勢いで山を降りてしまったと
鴉から聞いた
自分の隊服には着替えたが
私の手にある風呂敷包みには
炭治郎の隊服が入っている
これがないと彼も仕事に行けないだろうし……
でも 先にこの人達をしのぶちゃんの所へ
送って行く必要がありそうだ……
多分彼女達も
早くここから離れたいだろうし
せめて 生まれた この村が
見えなくなるような
場所まで なるべく急ぎたい
かと言っても
身重の女性も居るのだ
あまり無理は出来ない
みくりは一番近い藤の花の家に
その日は世話になる事にした
家の入り口で事情を説明すると
快くその女性達の衣類や食事を
用意してくれた
いくら何でも
全員が薄汚れた白装束の集団は
不気味だからな
それから
少しの間だったとは言えども
炭治郎君の隊服に袖を通しておいて
そのまま返すのも気が引けたので
申し訳ないが 藤の花の家の人に
炭治郎の隊服の洗濯をお願いした
お館様にこの女性達の処遇についても
どうにか出来ないかとお願いしたいし
そもそも炭治郎君の隊服を
返さないといけないので
その嘆願をしたためて鴉へ託した