第50章 ハルイロ お相手:煉獄先生 ※裏なし
他の誰でもない
この電話の向こうの貴方で
「そのまんまの意味です」
スマホを持っているみくりの腕には
あの3月の最後の日曜日に
森林公園で
初めて会った時に
あのまま 捨てる事が出来ずに
持って帰ってしまった
アーモンドの花のブレスがあって
あの時の 姿のままの
鮮やかな ハルイロを称えていて
『ハハハハハッ、そんな事を
言われてしまったら、俺に。
期待してしまってもいいと、
言っている様な物だがな』
「…ついでの話なのですけど。
そのまま聞いて貰えます…か?」
そう言った 向こう側からの
返事は無くて
私の言葉の続きを
待ってくれている様だった
「実は…なんですけどね、
杏寿郎さんと初めて会った時。
私の髪に引っかかって居た、
アーモンドの花の事…なんですけどね?」
『ああ。あの、少し早い
春を知らせてくれた花の事か?』
「今…、ありますよ?ここに。
少し形は変わってしまってますけど、
あの時のあの…可愛らしいピンク色は
そのままです。可愛いお花ですね。
アーモンドの花。頂いた物とかでも
なんでもなかったんですけど、
捨ててしまう事が…なぜか出来なくて」
スマホを反対の手に持ち替えて
みくりが自分の腕を
上に上げてかざすと
レジンの中に閉じ込められている
アーモンドの花の
可愛らしい 淡いピンク色が見えて
あの日の 記憶が
昨日の事の様にして
鮮やかに思い出されるから
「この、花びらは…宝物ですので。
だって、この花びらが私の髪に
引っかかってくれていなかったら。
今、こうして…、杏寿郎さんと
話をして居なかった…んじゃないかって。
そんな気がしてしまいますから」
贈り物でも 何でもない
ただの 風に舞って髪に降りた
一枚のアーモンドの花びらを
彼女は宝物だと告げて来て
『…参った…な』
ぼやく様にも聞こえる様な
そんな声が向こう側から帰って来て
「杏寿郎…さん?」
『次の日曜…まで、
待てそうにないな…。
さっき別れたばかりなのに、
また、君に会いたいと…そう
思ってしまっている…んだからな。
みくりさん、今から少しばかり…
会えないだろうか?』
「だったら、森林公園で。
まだ、着替えてないので行きますから」
次の日曜日…じゃなくて
今…