第50章 ハルイロ お相手:煉獄先生 ※裏なし
「姉の事をご存じですか?」
『いや、ご存じも何も…
俺等の学年の中で、小野寺君の
事を知らない…やつは居ないだろうからな。
それぐらいに、君のお姉さんは
何と言うか…』
「目立ちますよね?見た目も
ですけど、性格も破天荒な感じで…」
『これは…手強そうだ』
ぼそっと杏寿郎が
電話口で呟いた言葉が
聞き取れなくて
「私としては…、どっちでも
いいんですけど。あの、杏寿郎さん」
『どうした?どうかしたのか?』
「この、頂いたチューリップで
スマホのカバーを作ってもいいですか?
押し花にして、レジンで固めようかなって」
『いいのか?そんな事をして』
「でも、枯れちゃいますよ?
そうやって加工したら
綺麗なままで保存できますから」
『そうして残す意味を俺は
尋ねているんだがな…?
俺に、それを言ってしまっていいのか?
その花束の意味は、教えて貰ってないとか?』
ドキッとその杏寿郎さんの言葉に
自分の胸が跳ねてしまって
ドキドキと早鐘を打っているのが分かる
「だったら…、
たまたまじゃない…って
そう言う、意味に
その、…なってしまいません…か?」
『たまたまじゃないから、
わざわざ君に、こんな事を聞いて。
期待してしまっている…んだが?』
このチューリップを残すと言う意味は
この12本の 赤いチューリップに
込められている杏寿郎さんの想いも
そのまま 残して置きたいって
私が考えているのかとそう
訊かれてしまっていて
でも 今は こうして
色鮮やかに 咲き誇っていて
綺麗だけど…
その花びらが 少しずつ落ちて
花が開ききってしまって
色がくすんで…行ってしまって
枯れ落ちてしまうのだと
この花が 枯れてしまうのと一緒に
記憶まで色あせて
今日の色を忘れてしまうんじゃないかって
そう思うと…
残して置きたいと 記憶にも
そして 形としても
そんな風に思ってしまうのは
おかしいんだろうか?
この 私の手の中にある
ハルイロを
ギュッと自分の胸にみくりが抱きしめる
自分のこの手の中に
自分の記憶の中に
自分の… この胸の中に
淡く ほのかに 色付き始めている
この ハルイロを
「いいですよ」
『いい…というのは?』
私にくれたのは…