第50章 ハルイロ お相手:煉獄先生 ※裏なし
そう俺が言った後から
すっかり隣の助手席の
彼女は黙り込んでしまった
ルームミラーで助手席のその顔を
チラッと垣間見ると
かなり表情に出やすいタイプらしく
俺がさっき言った言葉の意味を
あれこれと考えて想像してしまっている様で
眉間に皺を寄せては
慌てた様な表情になったりと
一人で百面相をしている様子は
見ていて可愛らしいと感じてしまう
そっちには疎そうなお嬢さんだから
あまり そう言った男女のどうこうも
男女の駆け引きがどうだとかも
彼女に限ってはそうは 通用はしなさそうだ
「みくりさん」
「は、はいっ。何でしょうか?」
「君は…、本当に可愛らしい人だな」
ほら だから その証拠に
俺の言葉をそのまま素直に受け取って
そんな風に 顔を
真っ赤にしてしまうんだから
「冗談はやめて下さいッ、
からかってるんですかっ」
「んー?俺はからかっている
つもりは、更々ないが?」
「へっ?でも…だったら…」
杏寿郎が運転している車を
信号待ちで車を停車させると
ハンドルの上の部分で
自分の両手を重ねて置くと
顔をこちらに向けて来て
二ッと不敵な笑みを浮かべて来る
「可愛いと思ってるから、
可愛いと言っている……んだが?
別に深い意味も無ければ、
それ以上でも、それ以下でもない」
嘘… だなって
その言葉を聞いて 感じてしまった
この可愛いは
可愛い以上で それだけじゃない
別の意味があるんだって
気が付いた…けど
それの意味が… お子様な私には分からずにいて
ちょっとばっかり悔しくなってしまって
ぷうっと不貞腐れた様にして
無意識に口を尖らせながら
頬を膨らませてしまっていた様で
「ハハハハハッ。やはり、
どうにも君は、可愛い人の様だ」
「子供だからって、
からかってるんですか?」
ご機嫌を損ねてしまった様で
食って掛かる様な口調で返して来たので
「俺としては、
からかっているつもりは無いがな?」
ジッとこちらを見つめて来る
その瞳と視線がぶつかってしまう
熱の篭った視線を向けられてしまって
ドキッと胸が思わず跳ねてしまった
その熱い視線がふっと
穏やかな笑顔に変わったのが見えて
「少しばかり、俺らしくもなく。
遠慮…と言う物をしているだけだからな」