第50章 ハルイロ お相手:煉獄先生 ※裏なし
「心を奪われてしまって居た様だ」
うん そうなの
言ってる言葉は桜を褒めてる言葉なの
けど どうしてそれを
私の目を見て 私に言うんだろう
ドキドキと自分の胸が騒がしい
一本桜にじゃなくて
自分に言われている様で…
妙に意識をしてしまいそうだ…
「あの、この桜をドライフラワーにして
加工するので、それこそお時間が…」
「ハハハハハッ。時間は
幾らでも構いませんよ。枯れない
散らない桜が手に入るのですから。
少し、風も出て来たし。
これでは花冷えで風邪でも
貴方に引かれてしまっては大変だ。
では、また後程、こちらから
ご連絡を差し上げますので」
春の嵐の様なその人は去って行って
一本桜が夜の闇に浮かんでいた
綺麗…あまりにも綺麗過ぎて
恐ろしいとも思える程
また 風が吹いて
桜吹雪が舞う
こうして 風が吹く度に
雨が降る度に
咲いたら 散っていく物と知っていても
その美しさが 少しでもと
毎年の様に願ってしまう
そっと風に飛ばされない様に
軽く握っていた
自分の手を開くと
私の手の中には
目の前の大木からのおすそ分けの
春の色があった
ーーー
ーー
ー
それからは
煉獄さんとはLINEでの
間に仲介役としての宇髄さんとの
打ち合わせを何回かして
10日の日曜日に
修理した分のネクタイピンと
畳の市で依頼されていた分の
ネクタイピンを納品した
宇髄さんの依頼の
桜の花びらのピアスも
17日には納品できそうだと
煉獄さんにLINEをすると
電話をしてもいいだろうかと
LINEが返って来て
いいですよと返事を返すと
すぐに煉獄さんから通話が掛かって来た
「はい、もしもし小野寺ですが」
『LINEで返しても良かったんだが、
話した方が、早いと思って。
その、17日の事なんだが。
その日は何か予定があるだろうか?
もし、都合がつくのなら、
お礼と言う程の物でも無いんだが
色々とこちらの要求に貴方には
お手数を掛けてばかりだから』
「え。そんな、こちらからすれば
ご注文頂いてる様なものですし…。
お礼なんて…」
申し訳ないと思ったので
断るつもりでそう言うと
『お礼は困ると言うのが理由なのなら、
ちょっと、付き合って貰えないだろうか?』