第50章 ハルイロ お相手:煉獄先生 ※裏なし
「で、一体今日は何をするんだ?」
こうして展示されている
ここの木工教室で作れる作品には
木でできたスプーンから食器類
大きな物ならダイニングのテーブルセットまで
木で作れるなら何でもと言う
そんな幅の広い作品が展示されていて
恐らくにここで何かを作るのだろうが
一体何を作らされるのだろうか?
そんな事を考えて居る内に
何を作るのかを聞かされるまでもなく
全員がそろった様で
予定の時刻より10分過ぎてからの
体験教室の開始となった
生徒達が俺の分の料金を
支払ってくれていた様で
何十種類もある木材から
好みの物を選んで
木製のペンを作る体験をしたのだが
こうして何かに真剣に
取り組む姿を見ていると
3年間の記憶が蘇るようだな
そう思うと 自分の作品を作る事よりも
その生徒 ひとりひとりの顔を
自分の目に焼き付けて置きたくなる
木製の軸のペンはかなり
自由度の高い木工細工で
軸の加工のデザインも色を
塗るのも彫って削るのも自由で
「先生、皆の顔ばっかり…見てますね」
と向かい側で作業をしていた
久岡が声を掛けて来て
普段は何も言わないが久岡は
俺の感情の機微に敏感だったなと
そう改めて痛感してしまった
削り出した軸と
パーツを接着するのに
接着剤が乾燥するまでの時間を
休憩時間にしましょうと向こうの
指導員が声を掛けて来て
しばらく生徒達と話をして居たが
不意に外の空気が吸いたくなり
春の陽気に誘われて外に出ると
外は一条畳の市で賑わっている様だった
生徒達もつられて外へ出て来て
それぞれに興味のある店の方へと
歩いて行って それぞれに
思い思いの時間を過ごしている様だった
っとしまった つい生徒全員の
所在を確かめる様な真似をしてしまって居たな
今日は引率じゃないんだったな…
杏寿郎はいつものジョギングコースに
沿って続いている店のひとつひとつを
見て回って居ると
羊毛フェルトの可愛らしい動物たちや
トンボ玉のアクセサリー
変わった所では 似顔絵を描くと言うのもあったし
女子が行列を作ってるのは
手相占いをしてくれるらしい
要するに畳一畳で出来るのなら
何をしてもいいらしく
一条市の市民なら格安で出店できるからと
多くの店が立ち並んでいた
「ん?あれは…」
杏寿郎の目にあるものが留まった