第12章 銀の流れる川 前編 お相手:竈門炭治郎
ここにはもう
みくりさんの 匂いはない
みくりさん らしき血の匂いもしない
みくりさんは……どこへ?
みくりさんの匂いは覚えてる
意識をその匂いに集中して
炭治郎が 目を閉じると
脳裏に糸の様に
その匂いの跡が映るように感じる
ーーーーーー
頭が…痛い
後頭部に鈍い痛みがあった
どうやら 私は後頭部を殴られて
気を失っていた様だった
「………うっ…、ここ…は?」
気が付くと
私は 洞窟の様な場所に居て
寒いと思ったら
上半身がむき出しになっていて
両胸を放り出したような恰好になっていた
顔に掛かっていた布と
猿轡になっていた布は無くなっていたが
せめて丸出しになって居る
両胸を隠したい所だが
自分の手を後ろ手で縛られたままなので
それを自分で戻すことも
手で隠すことも出来ない
後ろ手に縛られていて
それを柱の様な物に固定されている様だ
そして この洞窟には
何人か若い女が居て
そしてその女達もまた
私と同じように
胸をさらけ出した格好をしている
こっちの柱と
あっちの柱に
女が分けて数人ずつ
括り付けられているが
あっちの柱の女の人は
大きなお腹をしており
妊娠している様だった
鬼が人と子を成すのは 聞いた事がない
人から鬼になるのに変化しているのだから
その理は 人のそれとは異なる
似て非なる物…それが 人と鬼だ
人と鬼の理は異なるのだ
鬼の子供を人が宿す事はない
だったら…あの 大きく張り出した腹には
一体……何が 入ってると言うのか?
「うっ、…うう゛うーーっ」
それも 一番大きな腹をした女は
どうにも産気づいている様だった
顔を痛みに顰めては
うめき声をあげるが
その隣にいる
同じ様にその女程ではないが
大きな腹をした女が
産気を逃すように声を掛けている
異形の子など 産みたくはなかろうが
自分の体内に宿しているだけでも
気が気では居られないだろうし
まして それを産みだすだなんて……
この場合は 腹を裂いて
中の子供を引きずり出して
頸をはねるのが正しい救い方なのか?
それとも もう
母体共々 斬らねばならないのか…?