第16章 釘
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『…侑くん、そのボトムは水陸両用?』
穂波ちゃんは店で果物を二つだけ買って、店を出た。
今は海のある方に向かって歩いてる。
すぐそこやけど、いっぺん車に寄りたいんやって。
どんな車のってんねやろ。
サーファーやしイカツイの乗ってんのかな。
そんなん想像しただけでかっこええな……エロいな…
『…侑くん?』
「…え、なんやったっけ?」
『…それ、海入れるやつ?』
「あぁ、うん、せやで。水陸両用」
『わたし今から海入りたいんだけど、侑くんはどうするかなって』
「…海。 …海? …入る!海入る!」
『…笑 うん、ちょっとさ、どうしてもサーフィンもしたい。
せっかく一緒にいるのに、ちょっと、いいかな?』
「おん、もちろんええよ。 もし時間あったら俺にもちょっと教えてや。
穂波ちゃんが気の済むまで波に乗ったあとでええから」
『うん、もちろん。今日だけじゃくても、是非』
10ヶ月くらいぶりに、
アメリカで、
しかもドッキリやないけど事前連絡なしで会うてるのに、
このなんともない感じ、なんなんやろ。
事前連絡なしで会うてるからか?
すっごい、穂波ちゃんの日常の中に入り込んでる感じがあって、
妙に安心するし、むっちゃ幸せやし、特別感すごいのになんともないような。
『…どのくらいいるの?』
「1週間」
『お、しっかり休み取れたんだね。いつ来たの?』
「ぉん、無理くりとったった。今日着いた」
『あ、そうなんだ。すごいね、会えちゃった』
「研磨くんが、天気良かったらここ来たらおると思うよ、いうて」
『…教えてくれたの?』
「そ。 ほんで会えた」
『嬉しいね、嬉しい。 …ちょっと待っててね、着替えたくて』
「…は?」
『…ん?』
なんそれ、これ乗ってんの。
ベンツのGクラス。
黒くてイカつい、高級車。
エッロ…