第16章 釘
『…ねぇ、侑くん』
「……んー?」
『離して?』
「どぁっ あまりに幸せでぼーっとしてまった」
やらかいし、ええ匂いするし、
もう俺何もいらん、バレーができて穂波ちゃんがおればそれでいい…ってなっとった。
抱きしめてた手を、ばっと離して両手を上に上げる。
『…ふふ、なんで手を上に上げてるの』
「…わからん、なんでやろ」
『freeze, or I’ll shoot』
「…?」
穂波ちゃんはなんか小声で呟いてから
一歩二歩、距離を取るように後ろに下がる。
「え、なに」
そんで5歩くらい下がったとこで止まって、左腕を右腕で支えるようにして。
左手はあれや、いわゆる、あの形にして。
なんそれ、って一歩近づこうと足上げたら、
『bang!』
そう言って俺を撃ってきた。
…いやだからなんこれ。
「…っう ………穂波ちゃん… なんで……」
『あはは!侑くん撃たれるの上手!』
「いやもうそこ通常運転なん!?ちょっと乗っかった俺の気持ちはどうなんの」
『あ、ごめんね。 いいよ続けて?』
「…ぉん、ありがと …って誰が続けるかっちゅーねん!」
『あはははは… 侑くんだぁ…♡』
「ぉん、会いに来たで」
『会いに、来たの?』
「ぉん」
『何か他の用事のついででは、なく?』
「せや。目的は穂波ちゃん」
『…なにそれ、聞いてない。ありがとう』
「………」
『目的わたしで、わたしに連絡取らずに会いにくるなんて』
「…あかんかった?」
『ずるい。 すき。 ありがとう。 嬉しい』
「…ん、えーよ。嬉しいんは俺の方。 …え? 好きいうた?」
『うん、好きいうた』
「もっぺん言って!」
『…いーわない …とりあえずここ出よう? わたしちょっとお買い物してくるね』
そう言うと、穂波ちゃんは食品が売っとるとこに向かって歩いてく。
俺もそのあとをゆっくりついていく。
グーサインとか、グータッチとか、サイレント拍手&頷きとか、
店におる人たちがしてくれる。
どういう意味やろか、わからんけど、まとめるとよかったな!って感じか。