第17章 正体
ー影山sideー
朝から道に迷って穂波さんに迷惑かけてらんねーなと思って、
住宅地を一周走ることにした。
ブロックの数を数えながら走って、現在過去含めチームメイトの背番号にして覚えて。
そしたらすんなり帰ってこれた。
むしろ早く終わりすぎたくらいだったから、二周した。
ちょうどいい時間に帰って、
水を飲もうとリビングに向かうと穂波さんはいなかった。
いた、空気みたいなのはあった。
いいもんだな、と思った。
そこに姿が見えなくても、少し前にこの部屋に誰がかがいたっていう空気があんの。
それが好きな人だと、殊更に、良い。
「…好きな人」
頭ん中ってのはよくわかんないことがあるなと思う。
心の中はもっとだ。
掴めない何かを掴もうとしている時は全くもって答えに辿り着かないのに、
なんでもないことをなんでもない感じで考えているとふと答えがそこにあったりする。
こういうのって、何気なさすぎてすぐ忘れちまうことも多いんだけどな。
「…好きな、人?」
とりあえずシャワーを浴びて汗を流すことにする。
穂波さんの部屋の近くには穂波さん用のシャワールームとトイレがあって。
俺の泊まらせてもらってる部屋の近くにはその部屋用のがある。
これが当たり前なのかどうかわかんねーけど、日本じゃあんまねーよなと思う。
リビングとか穂波さんの部屋は一階にあって、
俺が使ってる部屋は地下一階…になんのか?
階下にある。
けど、普通に明るい、庭もある。
坂に面して作られてるからだよ、っつってた。
だから地下じゃなくて上の階、下の階っていうのがしっくりくるのか?
上の階の庭にはスケボーする場所もあった。
下の階は普通に、のんびりするための、緑の多い庭がある。
階段を降りて、シャワー浴びて
ちょっと庭にでも出てみるかなと思った。
裸足でいいか、そのまま外に出る。