第16章 釘

「穂波の素性は知られたくないの、こう、明らかな感じでは。
だから会いにいくって言って会いにいった相手＝穂波にはしないで。
…あ、穂波ってその、アカウントの」

「アカウントの中の人、あの動画の人＝穂波ちゃんってならんようにってことやな」

「…ん」

「なんでなん？」

「…穂波のプライベートとプライバシーと今後の可能性を潰したくない」

「…可能性を潰す？」










どういう意味。











「…穂波が変わらずのびのびといられるようにしたいの」

「………」









…研磨くんが俺らみたいなやつをどうして放っておけるんか、ずっとわからんかった。
おかげで片思い幸せに継続できとるんやけどそれでもわからんかった。
サムはほんまに理解しとるみたいやけど、教えてくれんし。
（研磨くんとの関係が浅いからわからんのやって言うだけやし）

でもなんか今ちょっとわかった気がする。
穂波ちゃんの天然たらしなとこも、そのままにしたいんや。
できる限り制限かけずに、あののびのびとした天真爛漫なかわいいとこ見てたいんや。

…それってむちゃくちゃ心広いのと同時に。
…俺も含め研磨くんの庭で飼い慣らされとるみたいやな。
でもこれ試合ちゃうし、穂波ちゃんに関わることやし。
そんな策略的なんと違って、自然とそうなっとるんやろうないうのもわかる。
…その上で研磨くんに飼い慣らされるってちょっとエロいなとかも思う。












「別に誰と会うかとかだけじゃなくて…
大学卒業後した後の選択肢の幅とかそういうの。制限かけたくない。
だから、侑くんのやり方でいいから、穂波のこと守ってね。
失敗したら…覚悟しておいて」











やからなんでそこでちょっと楽しそうな声になるん。
そこは抑揚ないままでええやん
…こわ。　…そんで、エッロ。











「やめて！追放だけはやめて！」

「…追放？　は？」

「…なんでもない！でもわかった、わかった！」

「…ん、ヨロシク」













そんなやりとりがあった上で、
俺は穂波ちゃんに会いにきた。