第3章 くじら
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クロさんと研磨くんの3人でホームに立ってる。
嬉しい、うれしい!
「いやぁ〜こーんな可愛い顔して喜ばれちゃったら、勘違いしちゃうねぇ」
「………」
『だって、研磨くんとクロさんが一緒にいるの見るの大好きだから」
「…ふ 笑」
「…そっちかーい」
『…?』
「そこは俺に会えて、でいいんじゃないの〜?」
『あ、うん!クロさんに会えて嬉しいよ』
「…まぁ突っ込みどこはあるけど、いいわ」
今日クロさんはご実家で夕飯を食べていくんだって。
今は前期のテスト前だって言ってた。
昨日は補講とバイトで来れなかったって。
「研磨のおばちゃんのご飯も食いてーし、穂波ちゃんのご飯も食いてーけどな」
「………」
『実家のおばあさんのがやっぱり、ね!』
「………」
『でも今度食べに来てね!お母さん達も喜ぶよ』
「おー、喜んで!マジでいくわ。っつーか、今度作りに来て♡」
『あ、いいね、クロさんの一人暮らし邸にお邪魔したい!』
「ね♡研磨が部活の時にでもおいでよ♡」
「…クロ、そのなんか語尾につくマークやめて、きもちわるい」
「マークなんか付いてませんー!研磨くんなに言ってるんですかー?」
『あはは!』
研磨くんは相変わらずのように見えてやっぱり、クロさんがいるのが嬉しいのかな。
クロさんは実家にたまに顔出してるみたいだし、
そんなに久々ではないだろうけどでもやっぱ、ね。
こうして、数ヶ月前までのいつもの感じがふいに再現されると。嬉しいよね。
わくわく顔ともちょっと違うけど、嬉しそうな顔、してる。
「ツトムくんはどうしてる?」
『今はフェスに、ツアーにいそがしそうだよ〜 こっから晩秋くらいまできっとひっきりなしじゃないかな?』
「すげーな、フリーランス一年目にして」
『ねー、あの人柄もあるし。腕は確かだし。アーティストともすぐに仲良くなっちゃうお猿さんだから』
「…猿って。 まーな、まぁ、確かにのっぽなイケメン猿だよな」
そんなこんな話をしたりしなかったり。
研磨くんはゲームをしながらうとうとしたりして、車内で過ごして。
わたしは一足先に電車を降りる。
また明日、って研磨くんと言葉を交わして。
明日のお昼ご飯、何にしようかな。