第15章 バンバンジー
──「…あぁ、コヅケンの名付け親」
「うん。そのマリオに聞いてみた、会社名考えて欲しいんだけどって」
「え、その子ってまだ8歳とかじゃなかったっけ」
YouTubeの流れからのハンドルネームはわかるけども、
会社名相談するか?8歳児に。
「今9歳。…うん、すっごいうるさいし、子供だけどでも」
「………」
「なんかそういうセンスあると思うんだよね。 そしたら年齢とか関係なくない?
思い浮かんだから聞いてみた。 そしたら結局、いいの考えてくれた」
「…確かに、全然変じゃねーけど。
実際どういう意味があんの、そのbouncing ballには」
「…んー特には。なんとなく」
「………」
「…マリオに相談したらすごい質問責めにあって。ひとつひとつ答えていった」
「ほぅ」
「…楽しい、おもしろいを追ってたいこと。
…ずっと続くラリーみたいな感じとか。
…いろんな人が触って跳ね返ってくる感じとか」
「それはまた抽象的な」
そう、研磨にしては随分抽象的な会社名だなと思ったんだ無意識に。
「そう、質問してくることがなんか、ふわふわしてて。
あとそこはまだ9歳だから、言葉選んでたらもっとふわふわして。
その結果がこれ」
すっと机に出してきたのは研磨の名刺。
かっけー会社のロゴが左上に入ってる。
そっか頭文字がどっちもBだからこんな風にまとまるのか…
「…ナルホド。 …え、もらっていいんすか?」
「ん、どーぞ」
「………」
「Bをダブらせたからロゴもかっこいいの作ってもらって、ってとこまでがマリオの考え。
将輝さんにそれそのまま伝えて。 ほら、もうこの段階で、ボール弾んでるでしょ。
…繋ぐ、感じ。 …繋がってく感じ」
「………」
「え、なんで泣いてるの」
「…ほっといてクダサイ」
会社名の意味を理解しちまったかもってなって。
あの研磨が、研磨のままで、
多くの人間と関わりを持っていこうとしてるんじゃねーのか、仕事として。
金はあるから、楽しいを追求するのにその金回していこうじゃねーけど。
世話になった人にも、これから出会うだろう人にも。
そう思ったらなんか泣けてきた。