第15章 バンバンジー
ー黒尾sideー
「ナルホドねぇ…」
6月最初の日曜の午後。
バイトの休憩中にバイト仲間に見せられたインスタ動画。
仮面舞踏会みたいな綺麗なマスクをかけて女の子が踊ってる。
口元は見えるあのやつ。でも派手じゃない、でも地味でもない、すげー綺麗なの。
キャプションは
Perpetuum Mobile/Masakatsu Takagi
のみ。
曲名とアーティスト名だろう。
聞いたことねー、最初から最後までピアノだけの、すげー綺麗な曲。
その曲に合わせて踊る様は無邪気さをどこかにたたえながらも、儚い。
高台の丘みたいなとこで気のむくままに踊ってる、ように見える。
向こうの方には海。 夕方だろうか、太陽を映し光っている。
長い髪の毛はおろしたままで、ワンピースを一枚だけ纏って、裸足で。
髪の毛も、纏っている布も、風も、光も。
全てが彼女の魅力を引き出すことに加担しているような… そんな。
上手く例えれないし、例えようがないけども…
これが穂波ちゃんであるということは、根拠もなく確信した。
でもだからといって、「あ、この子俺の知り合い」なんて気軽に言えないくらい、なんつーか。
次元が違う。
文化祭で見た時も思ったけど、そんなもんじゃねぇ。
そう簡単にいいたくない言葉だけども。
この世のものとは思えないほどに綺麗だった。
そしてそのダンスに負けないくらいの映像技術。
誰が撮ってんだ?
と思った時には口からこぼれていた。
ナルホドね、と。
あまりの美しさに思考が停止してたのもあって、
そこに行き着くまでに5回はリピート再生したけども。