第15章 バンバンジー
・
・
・
「…別にフツーだよ」
あれから謎の沈黙のまま、並んで歩いていた。
研磨は別になにも考えてねーと思う。
俺はなんか、ぐるぐると考えちまって…
もう少しで店に着くなって頃に研磨が口を開く。
「なんでおれじゃないのってイラッとしたり、
なにチヤホヤされてんのってムカついたり、
触るなよってマウントとりたくなったり……
男だからとか女だからとかないんじゃないかな、別にフツー」
「………」
「…勘違いだったらごめんけど」
「…てことはつまり研磨も」
「いやおれはないんだけど」
「………」
「え、フツーなんじゃないの?
みんなのこと見ててそう思ってたけど、中学とか高校のころとか」
「………」
「女の人が好きって思いこんでるだけで、別にどうとでもなるんだろうなとか」
「………」
「…あ、違う。クロがおれのこと好きとかそういう話じゃないから」
「………」
「ただなんていうか、グレーゾーンのよくわかんない感情ってあるよねってこと」
「………」
「おかげで今日はそれに助けられたし。 …ありがと」
「…あ、チビちゃん?」
「え? …あー、まぁ、うん、チョットはある。
翔陽はおれのじゃないけど、おれのになったらそこで終わりだけど」
「…チビちゃんがいつまでも元気でありますように」
「ねぇ、それなんなの、たまに言うよね。
言うっていうかなんかお経みたいに呟くのなんなの」
「願いです」
店についた。
別にフツー、か。
あぶねー、いちいち感情に名前つけて拗らせるとこだった。
確かに別にフツーかもしんねーな。