第17章 正体
ジュノを家まで送ってから、家に帰宅。
影山くんはすーすーと綺麗な寝息を立てて寝ている。
…もっと遠回りして帰って、寝る時間を作りたいところだけど、
今のわたしにはそこまでの時間の余裕はなくって。
自分の荷物を持って一度家に行って鍵を開けて。
影山くんのトランクも玄関まで持って行って。
『…影山くん、』
影山くんの座ってる側の扉を開けて外から声をかける。
ぐっすり眠っていたように見えるけどすっと目を覚ますその感じが、
影山くんぽいな…ってなぜか感じた。
野生動物みたい。
ゆっくり瞼を開くその様子に見惚れてしまった。
本当に全ての造形が美しすぎる男の子だと思う。
肌質も、輪郭も、唇の色形も…
…あ、唇ってそう言えばわたしさっき、
「…すんません、寝てました」
『えっううん、寝ていいの。移動疲れるよね。
せっかくなら横になって寝るといいよ、家着いたから』
「…あ、はい」
とりあえず今必要なところだけ案内する。
キッチン、リビング、
影山くんの使うゲストルーム、シャワールーム、トイレ。
荷物は部屋の前に持ってきておくね、横になってて大丈夫だよ
って言ったけど流石にそれは、普通に断られた。
自分でできますって。 そりゃそうか。
影山くんは自立した男の人なのに、しかも一個しか歳も違わないのに、
どこか従兄弟の年下の学生を家に泊める、みたいな感覚が自分にあるのかも、とその時思った。
影山くんは玄関まで一度荷物を取りに行った。
わたしはその間にさささっと蓋つきのピッチャーに水を用意して、
グラスと一緒に影山くんの部屋に持っていく。
ちょうど、影山くんが扉を開けたところだった。
「あ、穂波さんも休みますか?」
『…ん? ううん、これ置きにきた。 ちょっと入るね?』
「…ありがとうございます」
『ゆっくり休んでね』
コンパクトなスーツケース、バレーボール、
コンパクトなリュックサック。
スマートな荷物の中に当たり前にそこにいるバレーボールの存在に。
どこまでも影山くん、を感じながら部屋を後にする。