第3章 くじら
ー穂波sideー
「お疲れサマンサ〜!」
仁花ちゃんとお話ししてると、クロさんの声。
ふっと声のする方に顔を向けると、
その変わった挨拶をしながら向かっていく先は蛍くんで。
蛍くんはあからさまに訝しげな顔をしてる。
「ちょっと、黒尾さん。変な挨拶しながら僕のとこに来ないでください」
「なっ!ツッキーひっどーい。研磨と同じこと言う〜」
「…孤爪さんも大変ですね」
「いやツッキーはさぁ、そういう時もう、命令形で一言言えばいいんじゃない?とか思うんだよね〜」
「はい?」
「ツッキーはなんだかんだ丁寧だから説明してくれるだろ?」
「…」
「そこをもう、短くパシっと、 黙れ。 とかさ」
「…」
「チビちゃんに使うならそうだな、 動くな。 とかさ?」
「…お疲れ様でした」
「いやいやツッキー、木兎みたいに扱わないで?」
「…」
そんな愛おしい会話が聞こえてくる。
それからきっとバレーのこととか、普通の?会話になったのかな
蛍くんの怪訝な顔はどこかへ消えていった。
確かに蛍くんは うるさい。 とかは言うけど
強い言葉、命令形みたいなのは使わない…気がする。
聞いたことないだけかな。
研磨くんがカズくんに言った命令形もきゅんとした。
蛍くんのそれも確かにきっときゅんとするだろうなぁ… 例えば…
確かに 動くな。 は良い♡
眠れ。 とかも良い♡
来い。 とか…?
というか研磨くんってなんで命令形使ったんだっけ。
言った言葉は、 おさめろ。 で。
それは3人で川の字になって寝た翌朝のことで… あ………
「おやおや〜?うちの可愛いマネちゃんはここで何を妄想してるのかな〜?」
『あっクロさんっ マネちゃんはあちらに!』
「そっかそっか、穂波ちゃんはもうマネ代理じゃねーのか」
『そうなの、3人もかわいいマネちゃんズがいるんだよ〜』
「俺にはお前が一番可愛いっ!」
『きゃ!鉄くんにそう言われたら嬉しいっ♡』
悪ノリ悪ふざけをしてると、蛍くんがまたドン引きの顔で立ってる。
それがおかしくって笑ってしまう。
あぁ、いつもいつだってその時の組み合わせがあって、どれも愛おしいけれど。
去年のメンバーは特別な愛おしさがあるなぁってそんな想いが込み上げる。