第15章 バンバンジー
ー治sideー
【明日の夜はケンさんとこ?】
ツムからLINE。
俺は金貯めたいからまだ実家に住ませてもらっとって。
ツムはMSBYの練習場所の近くに引っ越して一人暮らし。
やから前よりLINE、めっちゃ使うようになった。
【おんで。くんの?】
【おん!一人やでカウンターとっといて】
【…配信見るんとちゃうよな?】
すぐ既読ついたけど返信こん。
【観るんはええけど、音出すなや。迷惑かけんなや】
わかっとるとは思うけど、でも一応釘刺しておく。
コヅケンを知ったんはケンさん経由やった。
なんやろ、本人や穂波ちゃんでないのは当たり前な感じで、
ツムともちゃうて、角名とか古森くんともちゃうかって、
全然研磨くんと内輪やないケンさんからってとこが研磨くんの実力みたいなん感じた。
──「治くん、ゲームするっけ?」
「そんなせんけどまぁ、しなくもないっす」
「YouTubeとかは観る?」
「そんなみいひんけど、メシ系ならたまに時間忘れて観てまいます」
「……あんま脈ない雰囲気だけど、でもさ、すげーチャンネルみつけたの」
「………」
「ゲームしない人にも受けそうなゲーム実況」
「…はぁ」
「おすすめしても家で観てくれなそうだから今観せるわ。
コヅケンって言うんだけど…」
スマホをいじりながらケンさんがつぶやいたその音が
妙に耳に残った。
初めて聞く名前やのに、なんか聞き覚えあるな みたいな感じで。
「まだひとつしかなくって、
5日前に初投稿したばっかだけどほら、再生回数やばい」
声を特別張るでもなく、
でもきっといい機材使ってるのもあるんやろ、
静かやけど聞き取りやすい声がして。
そんでそれは確かに馴染みのある声で。
いやコヅケンて。
研磨くんやん、ってなった。