第3章 くじら
ー穂波sideー
『ふはっ… 笑』
「また… 笑 あはは…」
ツボに、入ってしまって。
京治くんと2人で肩を震わせて何度も吹き出してしまう。
ご飯を普通に食べれなくなってしまってる。
「赤葦が吹き出してる。ツボってる」
「まじ、初めてみた」
「レアレア、撮って先輩たちに送ろーっと」
向かいに座る、烏野、生川、森然の3人がそんなことを。
京治くん、結構笑うんだよ、こうやって、ある意味しょうもないことで、
一緒にツボに入ったり、するんだよ…
とか思いながらそんなこと喋る余裕はない。
「…ふ」
研磨くんは隣で静かに、冷静に、わたしを見ながら箸を進めてる。
時折こうやって小さく笑いをこぼしながら。
『…ふぅ ちょっと… 落ち着こう、うん』
「…だね、せっかくのご飯を… ちゃんと食べないと」
2人で深呼吸する。
吸ってー 吐いてー
3回。妙に息がぴったりだったのは確か。
「ふっ… 」
「ぶはッ!」
「だははは…!」
「ぶーーーっ!!!」
わたしの隣にいる研磨くん、それから向かいに座る3人が吹き出した。
深呼吸の様が滑稽だったのかもしれない。
けど、
『…?』
「…?」
周りがツボるころには
スターターは落ち着いてしまう法則、なんてあるのかしら。
いやいつもそうなわけじゃない、か。
とにかくわたし達にはその波は押し寄せず。
でもみんなは逆にうねってうねって抜け出せない笑いの波に飲まれていく。
「いやそのきょとん顔やめろ…!」
「っつーかなんだよそのいきなりのどこ吹く風感…!」
そんなことを漏らしながらヒーヒー言って笑ってる。
京治くんとわたしはみんなには悪いけど
時間もあるしご飯ちゃんと食べようっていうモードに切り替わっていて
お互い肘を極力上げないようにしてご飯と向き合う。
…のんちゃんポテトサラダおいしい♡
「…ふはっ」
隣でちょっと笑ってるだけだった研磨くんがとうとう吹き出した。
向かいの3人は京治くんの時以上に驚いてなんだかもうがやがや
各校主将が集まる席がこんなにうるさいなんて、って周りから聞こえる。
今年の主将はみんな落ち着いた感じの人たちだから。