第14章 蜂蜜
そんな会話というか情報を得て、
研磨くんは今まで漠然と考えていたことがひと繋がりにイメージできたみたいな感じで、
落ち着いた様子で静かに、でも確かに目をわくわくさせて、
研磨くんがこれから約一年のうちにやりたいことを話してくれたんだ。
──「……翔陽のスポンサーになろうかと思って」
『…スポンサー?』
「ん、アキくんと会った頃から、スポンサーっていう仕組みみたいなのについてはたまに考えてて…」
『……』
平日の夕方、カズくんが庭のセクションでスケボーをしてる間、
キッチンにいるわたしのところに来て、研磨くんが話し出した。
「翔陽がビーチ行くつもりって聞いた時から少しずつ考えてて、
それでこの間ブラジルに行くって聞いて、繋がった」
『うん』
「…チームとかエージェンシーとか所属せず、基本フリーなんだって。
だからスポンサーの役割も結構大きいとか …その、ビーチの選手にとって」
『うん』
「それでさ、来年度ちょっと新しく始めることになると思う」
『うん』
「……マリオ達が言ってたYouTubeとあと、」
『うん』
「会社作ろうかな って」
『うん』
「………」
『…その、会社が翔陽くんのスポンサーにつくってことだよね?』
「うん」
『わぁ、すごいね、なんかすごい、素敵。いいね』
「…ん、それで」
『……?』
こうするね、うんそれいいね。
そんな感じの会話が多いと思う、こういう、個人の決断の時のわたしたち。
わたしには細かなことは見えないけれど
きっと研磨くんにはもっと細かく先のことが見えてるんだと思う。
それを全部聞かせて、なんて言わなくても、素直にいいねって思った。
研磨くんがやりたかったこと、やってほしい。
それを一番近くで……物理的な距離は遠くとも、一番近くで、みていたい。
だから一つ話の区切りがついたと思ったのだけど、
まだ続く様子になんだろう?と思いながら次の言葉を待った。
「…んーと、失敗とかしないつもりだけどでも」
『………』