第14章 蜂蜜
「……ビデオ通話してみたいんだって、いい?」
『え?あ、うん、もちろん』
間も無くして研磨くんの携帯の画面に映った翔陽くんは、
髪の毛がだいぶ伸びていて、
大人っぽいのか子供っぽいのかわからない絶妙な空気感でそこにいた。
「うぉー!研磨!穂波ちゃん!」
「…ん」
『やっほー、翔陽くん。髪伸びたね』
「そーなんだよ!なんか伸びちゃった」
『すてき、なんか色っぽいね♡』
「ふぇっ いっ いろっ ふぇっ!?」
『うん、色っぽい。 cute. 似合ってる』
「………」
画面の中で翔陽くんがあばあばしてる。
そんなことわかってる。
でもかわいいんだもん。
無造作な、天然の色気がこちらまでむんむんと伝わってくる。
それを素敵だねって、伝えることの何がいけな…
『…ふぇ?』
「…ふは 」
あばあばしてる翔陽くんはそれはまたかわいいなぁ、って眺めていたら
研磨くんがわたしの頬を、むにゅってした。
片手で、両頬を、むにゅって。
「…ちょっと褒めすぎだし、目がとろんとしてるし、見つめすぎ」
『へ?』
「だめ、いくら翔陽でもだめ」
『ふぇ?』
むにゅっとする手は弱まるどころか強くなる。
多分今わたし、すごい面白い顔してる。
口がこう、縦にぶちゅーってなって。
…見つめすぎって、ビデオ通話なんだもん、それに久々にみる翔陽くんなんだもん。
「…翔陽だから だめ?」
『…?』
少しむすっとした顔で
少し下の角度からわたしを見上げる研磨くんの破壊力ったら、ない。
まだむにゅってされたままのおかしな顔で、研磨くんの魅力に翻弄されてしまう。