第14章 蜂蜜
ー穂波sideー
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「あ」
『ん?』
お兄ちゃんが明日からワールドツアーの開幕戦に向けて発つのもあって、庭でバーベキューをしてる。
とは言っても、そんなにたくさんの人じゃなくって。
お兄ちゃんはもちろん、わたしが割とよく知ってる人、くらいの身内感の集まり。
穏やかに賑やかにすぎていく時間の中、
研磨くんと芝生の端の方に座ってぽけっとしてる時に研磨くんの携帯から通知の音がして。
「……翔陽から」
こちらは今サマータイム。19時くらい。
だから日本は11時くらい。
翔陽くんたちは今自由登校のはずだ。蛍くんが言ってた。
だから木曜…あちらは金曜の今日も翔陽くんは…学校にはいないんだろう。
「…スマホに変えたって、メールきた」
『わわ、そうなんだ。 よかったね』
「…ん、」
わたしはガラケーを一生懸命打つ翔陽くんの姿が愛おしくて結構好きだったりしたのだけど、
いろんなことが頭によぎってよかったね、と言葉にしてた。
それに対して研磨くんから当たり前に肯定の相槌が返ってきたことにまたきゅんとなる。
去年の終わりごろ、翔陽くんのこれからのイメージがかなり具体的になったんだと、研磨くんから聞いた。
電話越しにもわかるその、研磨くんのわくわく感ったらすごくて、
わたしはここでそれを感じで妄想もしてほわほわが止まらなかった。
──「…ビーチの特訓するんだって」
『ビーチ?』
「ビーチバレー」
『…ほぉ』
バレーはバレーでも、はて?どういうことだろう?
なんてぼんやりしている間にも
電話の向こうでの研磨くんのわくわくの空気は駄々漏れるように伝わってきて。
そして研磨くんは呟いたんだ。
「…おもしろいままで、いてほしいしそれに」
『……』
「…それをもっと見てられたらいいのに」
『……』
「もっと連絡とりやすかったら、いろいろ把握しやすいのに。翔陽スマホにしないのかな」
独り言ともとれるような内容と声量に、
ありったけのわくわくをのせて、そんな風に。