第14章 蜂蜜
ー研磨sideー
…まだ早いからって、まだ言えないってずっと思ってたことが
空気に飲まれたみたいになって、口からこぼれてた。
本心だから、言って間違った、みたいなことは全くないとはいえ、
え、何で今おれ言ってるの… みたいな感じがあったから、
車で来た人たちの賑やかさに助けられた。
2人だけしかいない、みたいなそういうところに行っちゃう時、
行ってる時ってなんか、何も聞こえない、何も見えない、とも違う。
確かに余計なものはよっぽど入ってこないんだけど、
なんだろ必要なものは全部、いつもよりすごい感度で入ってくるっていうか。
……演出する材料、みたいになるっていうか。
とにかくなんか、ひっくるめて、2人だけになる。
だから物理的に2人だけじゃなくても、全然、起こりうる。
おれは、約半年ぶりに穂波に会えて、なんか、ふわふわするっていうより、
やばい、もっとすき、めちゃめちゃすき、みたいなのがどしんと来て、
痛感っていうか、体感っていうか、すごくて。
とにかく、冷静に、浮かれてる感じがすごい。
『…ん』
「ん、」
ひとしきりキスをして。
次に行きたくなるくらい、キスを交わして。
ゆっくりと唇を離して、身体も離すと、
よくわからないけど意味がないわけじゃない、
相槌みたいな、頷きみたいな声を2人、こぼした。
行こっか、みたいな。
この辺で終わりにしとかなきゃ、みたいな。
そんな感じでまた、裸足で歩き出す。