第3章 くじら
ー穂波sideー
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午前中の練習を終えて、昼食。
ここで今回の食事はおしまい。
仕込むものはもうないので、のんちゃんも一緒に配膳の方に。
先に食事済ませたマネちゃん達が洗い物にまわってくれてる。
わたしとのんちゃんは、今ご飯食べてるマネちゃんが食べ終えたら交代する。
「ごちそうさま。炊き込みご飯、美味しかった」
『あ、うん。ありがとう。 …蛍くん、トレーはあっちだよ?』
蛍くんが空のトレーをもって、
配膳のとこの片付けや拭き掃除を少しずつ進めてるわたしのとこに来る。
ずいぶん、真っ直ぐに向かってきたので
間違えてないとはわかってるのに、そんな言葉が口から出てた。
「知ってます」
『…だよね』
「宮城いつからですっけ?」
『しあさって。水曜におばあちゃん家』
「…そっか、じゃあ泊まりの件、早めに返事ちょうだいね」
『あ、すっかり忘れてた』
「だと思った。うちに来ようとしてたのは金曜でしょ?
兄ちゃん、週末休みだし帰ってくるって言ってた、穂波さんに会いに」
『うん、金曜が確か蛍くんの都合よかったよね? …そっか、明光くんにも会えるの楽しみ』
「うん、じゃあとりあえずまたLINEして。早めに、ね?」
『はーい …ってまだ帰らないのに』
「だって穂波さんの周り、先客がいること多すぎて。
行ける時に行っとかなきゃってなるでしょ。
でも宮城では僕に会いにきてくれるし、それでいいんだけどさ」
『…ん、じゃああとちょっと午後練も頑張ってね』
「はーい」
淡々と飄々とすたすたと去っていく。
でも蛍くんはもうずっとどこか甘い。
ほんのりと甘さを常にわたしに残していく。
ずるいなーって、いつも思う。