第14章 蜂蜜
穂波は花束を抱えて、おれの半歩後ろくらいを歩いてて。
ありがとって会釈をして店を出ようと思ったら、呼び止められた。
すごく心を込めて、日本人のおれにもわかりやすいように、
またもやなぜか、感謝の言葉をもらった。
戸惑いながらも一応その言葉を受け取って、
穂波はにこにこと、またきっと必ず一緒に来ます、とか言ってて。
品良くでもどこかカジュアルに、店の人たちに見送られ店を後にした。
『…研磨くん、ごちそうさまです』
「うん、おめでとう」
『うん、ありがとう、わたし幸せ』
「ん、おれも」
『…ねぇ、研磨くん、少し寄り道していっても良いかなぁ?』
「うん 」
どこにいくの、って聞こうかと思ったけど。
どこでもいいやって思ってる自分がいてその言葉が引っ込んだ。
でもこういう時、確かに運転したいな、って、
カズマに言われたからか、すごい思うようになってきた。
今回こっちにきて、
次会うまでにやりたいこととかやるべきことがすごい見えて、
良い指針になるなとか思ってたけど。
免許も早いうちにとっておきたいな、とか。
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『この辺から歩いて行こうかな』
「…ん」
海沿いの通りに出て、20分くらい走ったかな。
穂波が車を停車した。
街灯も少ない、暗い道だ。
車を降りると波の音が聞こえた。
『すこし、砂浜の上を歩きたいなって思って』
「うん」
『わたし、靴脱いでいく… トランクにきっとビーサンあるけど研磨くんはく?』
「ううん、おれも裸足でいい」
車に靴を置いて、裸足でコンクリートの歩道を歩いてそれから砂浜に足が着く。
冷たいけどでもなんか下の方に熱を溜めてるような、そんな温度感。
2月の海ではあるけど底冷えとかしないような、感じがした。