第14章 蜂蜜
ルバーブのガレット、カルダモンアイス添え。
……美味しくないわけがない。
すんごく美味しい。
美味しいね、と、あとはむはぁ…みたいな感嘆の声くらいしか出せないまま、
ゆっくりとじっくりと食べ終えた。
「yeah, it’s quite good, the combination is like a magic」
(ほんと美味しいよね、組み合わせが魔法みたいだ)
食事を終えて席を立ったおじさまが、出口の方ではなくこちらに一度寄って、
そう話しかけてきてくれた。
『absolutely, it’s like a magic but quite natural at the same time』
(ほんと、魔法みたいでそれでいて、すごくナチュラル)
「yeah for sure. and thanks for sharing the beautiful moment. You have a good night」
(うん、間違いない。 それから素敵なモーメントをシェアしてくれてありがとう。 良い夜を)
そう言って研磨くんにも目配せをして、手を軽く上げて去っていった。
残りのルイボスティーを余韻に浸るように飲んでいる間、
数名、同じように声をかけていってくれる人たちがいた。
みんな、あっさりとあっけらかんと、そしてどこか品よくでもどこか砕けて。
なぜだかわたしたちにありがとうって、言って去っていくのだ。
「………」
『…なんだかたくさん感謝の言葉をいただいてしまった』
「…ふ、だね。変なの」
『ふふ、ありがとうなんて言われたらこちらこそありがとうって気持ちが湧いてきちゃって。
なんだか幸せだ』
「…ん、そっか」
そうして少し見つめあって。
それじゃあ行こうかってなって。
いつの間にかお会計は済んでいて、
出入り口で立ち止まることもなくさらりと抜けようとする研磨くんの流れとはうらはらに。
またもそこで、話しかけられ、呼び止められた。