第13章 空
ー研磨sideー
『それで、やってみようかなって、ちょっと検討し始めた』
穂波は、どうしたらいいかな?とか、聞いてこない。
だからって全部一人で決める、みたいな頑な感じじゃなくて。
いや、自分のことは自分で決めてきてるけどなんだろ…
こういう状況で迷ってる、とか 考えてる、とか そういうことを話してくる。
決断を他人に、おれに、ゆだねたりしてこない。
「うん。 前は検討するか検討してたもんね。 ちょっと進んだんだ」
『うん、なんか、だいぶ。 進んだ』
「アートのクラスって午後だったよね」
『…うん?』
その後海行って、家帰って夕飯なりなんなりを済ませて、今だ。
その間に、どんどん広がっていったのかな。
「じゃあ結構、勢いよくイメージが広がってる感じだ」
『あ、そうなの。 それでね、顔は出したくないなぁって思って』
「…なんで?」
『んー、なんとなく? 近くにいる人にはわかるだろうし、でも、ただなんとなく』
「まぁ、いいんじゃない。 普通に質問していい?」
『…うん?』
「アパレルのカタログでは顔出してるよね。
冊子も、ホームページも両方。 名前は出してないけど、水着も着てる」
『うん』
「だから露出がいやなわけじゃない?」
『うん、嫌なわけじゃないけど、望んでるわけでもない』
「…あぁ、うん。 なんかそうだね」
『うん、そうなの』
顔を出すことはそうしたいと思った時にいくらでもできる。
顔を出さない選択は、ありだと思う。
例えばいつもやってたサーフブランドのモデルとしての穂波を好きな人がいても、
動画を見て一発で同一人物だと特定されはしない。
憶測とかは飛ぶだろうけどそんなのは、何をやったって何かしらあることだ。
『それでね、仮面舞踏会みたいなさ、でもあんなに煌びやかじゃなくていいんだけど、
でも綺麗なマスクしたいなー!って思ったの』
「…へぇ」
それ隠したら余計エロくなるやつじゃん。
……魅力的だな、想像するだけで。