第13章 空
ー穂波sideー
「ビデオ通話にしても良い?」
『…へ?』
脈絡もなく研磨くんにそう言われて、間抜けな声出た。
ビデオ通話にしたってわたしテキスト読んでるし…
「穂波の顔見たい。 声だけじゃ物足りなくなっちゃった」
『……ん、ちょっと待って、タブレットに切り替える』
「ん、」
LINEだとタブレットやPCでできないから
こっちにきてから研磨くんとはFaceTimeで話すことが多くなった。
電話は携帯でいいけど、ビデオ通話は少しでも大きくみたい。
『オーケー。 …なんだったっけ?』
「ダンスの映像?」
『あ、そうなの、それでね、明日ランチしながら詳しく話すことになったんだ。
彼はYouTubeでチャンネル持ってる?らしくて、色々試みてるんだって』
「…へぇ。 その人は穂波のダンスみたことあるの?」
『一回あるって言ってた。 どっかで踊ってたって』
「あぁそっか、うん。 どっかで、踊ってたんだね」
『……』
「……」
どっかで踊ってた。 そんなざっくりした情報に、
それで十分だと言うように相槌を打った研磨くんが、
懐かしいわけじゃないけど唐突に何かが胸に押し寄せてきて、
画面を、そこに映る研磨くんを凝視してしまう。
『…すき』
「…ん、おれも。 もうシュシュつけてないんだね」
『へ?』
「今日、つけてたでしょ。藍染の、月島の」
『あ、うん? え、なんで、研磨くんこっちにいるの?』
カズくんと計画してこの家の空き部屋に隠れてるとか?
「ふはっ なわけないじゃん。今ここ、ほら、明るいでしょ」
『…だね、思考がぶっとんだ』
「カズマから送られてきた写真に写ってたから」
『そっか、うん。 あ、そう、それでね、既存の未編集のがあればってのはね、
わたしがもし配信?するなら、編集させてって言ってくれたの。
そんなことまだ考えてなかったんだけど…
急にね、みんなからの言葉が、パズルのピースみたいに集まってきたような感じがした』
「……」
研磨くんの相槌は基本、無言だ。
その無言の相槌に、どんどん言葉が溢れ出る。