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【ハイキュー】 続・波長 【孤爪研磨】

第3章 くじら


ー研磨sideー






『夏は夜。 月のころはさらなり。 闇もなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。 雨など降るもをかし』








穂波がおれの手を取ってそっと握りながら
さらさらと歌うようにまた、枕草子を音にする。

そっか、夏は夜か。
春は曙、夏は夜。 秋は夕暮れ… 冬は?

まぁ、いいや。

…夏は夜ってたしかにそうだな、とか思ったり。







「えっ」

『あっ、ごめん京治くん』

「あ、いや、ううん、穂波ちゃんがいいならこのまま」

『ほんとに? じゃあ、このままいい?』

「あぁ、うん。俺は、嬉しいよ」

『え、あ… うん…』








穂波と赤葦のやりとりを耳にして、
ふっと2人の方を見てみると、手を繋いでるようだった。

穂波を挟んで赤葦と3人で歩くなんて初めてで、
穂波はきっとどこかほわほわしてるんだろ。

今日赤葦とキスしたことも、好きって言われたことももうどこかへふっとんで、
今、この瞬間、3人並んで手を繋いで歩きたくなったんだろうな、とか。

…でも、おれとは指、絡めてる。
赤葦とは絡めてない、とか。

そんなとこまでおれはちゃっかりチェックしてて。
なんか変なの、とか思いながら。

別におれと指絡めてなくても、赤葦と指絡めてても…
穂波はおれのだから、いいんだけど、
でもやっぱちょっと、違うことが嬉しい …らしい。







「清少納言?」

『うん、ふとした時に声に出して詠みたくなる。
言葉ってすごいね。 やっぱ、綺麗だなぁって音が、あるよね』

「うん、そうだね。 …うん、そうだね」






赤葦が2回、呟いた。








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