第13章 空
ー月島sideー
あの日は結局日向の家に泊まって。
次の日は日向の妹も学童に行かないと言い張って、
おばさんが仕事から戻るまで結局みんな一緒にいた。
明日部活なんだし、帰っていいんだよ?って穂波さんに言われても、
君がいるなら僕も残りたい、ただそれだけの理由で残った。
感情の種類は違えど、みんな同じ理由だったんだと思う。
そういう人だ。
離れがたくさせる人。
そのくせに離れていても力をくれる人。
できることならずっと一緒にいたいけど、
一緒にいなくてもその存在があるだけで充実した気持ちをくれる。
昼飯は日向と影山と穂波さんっていう、
穂波さんがいなければ完全にアウトっていう顔ぶれで作ってくれた。
その間僕らは勉強を続けて、
ゲームをしてる孤爪さんに時折、聞いてみたりした。
やっぱりあの人の知性はすごい。
無駄がなく、でも視野が広い。
淡々と口数少なく、だけどとてもわかりやすい言葉選びで説明するものだから、
僕も山口も谷地さんも目から鱗というか。 驚きを隠せなかった。
教わることでわかる、その賢さの種類というか。
教えるのは苦手、とかそういうレベルじゃない何かがあった。
この人のゲーム解説動画とかあったら、
かなり再生回数伸びるんじゃないかと思ったけど言わないでおいた。
ひとまず僕は部活と学問の両立をまだしばらく続ける。
今に始まったことではない、一年の時からの延長だから大したことはない。
日向にあれだけ言っておいて、その先をどうすごすのかは見えていない。
バレーを続けるのか、バイトはどういうことをしたいのか。
お互いに仙台に住むことが決まれば本当に山口とルームシェアをするのか。
…穂波さんに会いに行くために貯金したいから、
山口とのルームシェアは良い、気がする。
家賃など諸費用は親が負担してくれる予定だけど、
2人で暮らすことで浮かせれるものは出てくるだろうし、とか。
この高校やこの教室はもちろん、
仙台の街にも、すでに穂波さんとの思い出があるのは良い。
飲み物、食事、それから風、そして空。
色々なところに散りばめれられた穂波さんの足跡。
それは確かにいつだって僕の活力であり続ける。