第13章 空
ー研磨sideー
『明日卵買ってきて作ろっか。炊き立てご飯に乗せて食べるとおいしいよ』
「おぅ!作る!」
卵黄と卵白の分け方を口頭やジェスチャーで伝えるより、
やってしまおうと思ったのかそう提案した。
「でもさ、その黄身を分けて使わない方はどうすんだ? 目玉焼きの白いとこ? 捨てんの?」
『ううん、捨てない。いろんな使い方ができるよ。スープとかふわふわのオムレツとか。
今日はもうご飯食べた後でしかも出発前だったからね、パンケーキに入れたよ。
卵白ってね泡立てるとメレンゲって言ってふわふわになるの……
あ、そっかそれも明日やってみよう? 泡立ててさ、何か作ろっか』
「うんうん!すっげーわくわくする!」
『ほんと? それはよかった。 わたしもわくわくしてる。 …じゃあそろそ…』
「あとさ、今日は夜食的な感じだっただろ?例えば合宿に出すなら他にもなんかつけてた?」
『……』
「……」
『翔陽くんが自分のお昼や夕飯に食べるならってことだよね?朝もいいよね、朝のおうどん』
「そうそう!大人数とかじゃなくて、そうそっち!」
『わたしが作るなら、そうだなぁ… ささみの天ぷらとあと季節の野菜もいくつか天ぷらにして。
酢の物とお漬物があればいいかな? あー、あと一品欲しいかな、ちょっと待ってね』
自分が作る場合、と前置きして言い出したものの
翔陽が作ることを想定してしまって少しごっちゃになってるようだった。
一生懸命に答えようとしてるその様子は、ただただかわいくて魅力的でずっと見ていられた。
翔陽も自然と矢印が新たに出現した感じで、楽しみだなって思った。
影山はもう、机に突っ伏して寝ていた。
『…さっきのまだ書いてない?消せる? 献立考え直そう。
わたしが作るならじゃなくて翔陽くんが作るならでいく。
でも今のじゃなくて、少し先の、ね?』
穂波はこういうの得意だ。
シミュレーションして組んでいくの。
じゃないとあんなことできないっていういろんなことを、
慌てる素振りもなくやってる、日々の中で。
いつもどれもすきだけど、
ちょっと先輩っぽい先生っぽいいこの位置の穂波見るのもいいなって。
これからの楽しみがまたひとつ増えた気がした。