第13章 空
ー日向sideー
影山と俺が同じ舞台でバレーできてんのは、
高校が一緒だからってことくらいわかってた。
おれなりに一年の時に比べてバレーも上手くなってきたし、
自己管理とかもましになったと思ってた。
けど、月島の言う通りだった。
ビーチで勉強したい、そう漠然と決めてコーチに相談して、
でもなんだかんだ目の前にある大会のことしか考えてこなかった。
悔しくて言葉も、涙も出ない。
バレーを続けたいから大学に行くなんて選択肢があるってことすらおれは知らなかったんだ。
…知ろうと、しなかった。
研磨も、研磨にしてはふわっとしたことを言ってくれた。
今はとにかく考えろってことだ。
それからシュミレーション?合ってる?しろって。
行動も移せることはやっていけばいいけど、
研磨の言う通り、おれはこの状況でも春高のことしか出来そうになかった。
2年前の春高で武田先生にも言われたのに。
やっぱおれはまだまだ…
『翔陽くん、何か飲みたいものある? 台所借りていいかな?』
「…へ?」
『食べたいもの、でもいいけど… 希望に添えるかはわからない』
多分おれずっと下向いて黙り込んでた。
どのくらいの時間かはわかんない。
穂波ちゃんの声の掛け方が、さりげないんじゃない。
おれのこと気にかけてくれてるのは伝わる、
けど、心配マックスとかじゃない、
なんつーか、すげー自然で、だからおれもすげー自然に戻ってくる感じがあった。
「…卵かけご飯」
「そんなの自分で作りなよ、せっかく穂波さんが作ってくれるのに、バカじゃないの」
『…ご飯余ってるかな? そうだ翔陽くん、一緒に台所きてくれない?』
穂波ちゃんは嬉しそうな顔をして、
いいこと思いついた、みたいな感じでおれを台所に誘い込んだ。
…うん、誘い込まれたって思った。
研磨とは違う感じで、でも、誘い込む感じがあるなって、思った。
夏の足をそっと下ろして立ち上がると、
影山がじゃあ俺も一緒に台所に行きたいっす見たいっす、とか言って、
それを山口と谷地さんが制してる声が後ろから聞こえた。