第13章 空
ー穂波sideー
蛍くんはそんなの心外と言うだろうけど、あれは確かに愛の鞭だった。
蛍くんの抱く翔陽くんへの、期待みたいなものがあってこその言葉だった。
「翔陽、」
「………」
「とりあえず思いつくこと、想像していけばいい。
やっていくのは今の状況だと無理があるから。
すこし頑張って情報集めて、シミュレーションして、
そこから派生した問題とかをまた頭の中でクリアして。
必要な人とか出てきたら、その人はキープして」
「…孤爪さん、ちょいちょいゲームっぽさが」
「…今までと一緒。 今までみたいに、でももっと」
「………」
「もっと工夫して、もっと広げて、それからもっと…」
「………」
「迷惑かければいいと思う」
研磨くんはそれだけ言うと、またゲームの方に意識を向けた。
蛍くんや研磨くんの言葉を聞いているあいだ、
少し、怖いくらいに翔陽くんは静かだった。
研磨くんが何を意図して声をかけたのかはわからない。
根掘り葉掘り後から聞くこともできただろう、わたしのいわゆる、位置なら。
でもあいにくそういう思考回路は持ち合わせていない。
何も意図してないこともあるだろうし、
研磨くんには少し、イメージがあるのかもしれない。
でも、迷惑かければいい、って。
それを研磨くんが言うのって。
なんか、すこし、
ううん、より一層?
研磨くんの器の広さ、みたいなものを見た気がした。
わたしの恋人としてや音駒でのいろいろや
単純にひとりの人としての、それは今までもたくさん見てきた。
でもあの時はもっとこう… 人の上に立つ人、って感じがあった。
そしてわたしはやっぱり能天気に、
すやすやと眠るなっちゃんの頭を撫でながら、
研磨くんかっこいい… などと思っていた。
ほれぼれするなぁ、すきすきすきすき みたいな感じで。