第13章 空
ー研磨sideー
「単細胞の君にもわかるように噛み砕いて伝えようと思うんだけど、」
月島はいわゆる一言多い、っていう前置きをして
そこに突っかかる翔陽に取り合うことなく話を続けた。
「影山と日向の言う、大学へ行かないには雲泥の差があるの分かってる?
ユース候補だよ? 王様だよ? 気持ち悪いほどの精巧なトスをあげる、影山と。
……君とはわけが違うんだよ。
「………」
「日本のVリーグの仕組みはわかってるよね?
海外のプロチームや日本のプロ野球、プロサッカーとはそもそもが違うんだよ」
「………」
「高校でスカウトされる人なんて一握り。女子の方が幾分か毎年それは多いけど、それでも数えるほど。
強豪大学に入学して成果を出して内定をもらう、それが一般的な流れ。
トライアウトをやってるチームもあるみたいだけど、それにでも参加するつもり?
まさか、なんの努力も、なんの下調べも、なんの計画もなく、
高校卒業後も影山と同じ舞台に立てるなんて思ってないよね?」
何も知らない人が聞けば、まるで影山を大好きな人間が翔陽を罵倒してるような内容だったと思う。
でもそれはおれには、なんだろ。
鼓舞っていうのかな。
月島から翔陽への期待、みたいなものを感じた。
それは多分、山口も谷地さんも一緒で。
穂波もそう感じたと後々話した。
「君にとっての近道は一体、なんなんだろうね。
…ま、舞台を選ばなければバレーはどこででもできるし、楽しいだろうけど」
翔陽は下を向いてぷるぷる震えてた。
夏ちゃんは翔陽の膝に足を乗せて、穂波の膝に頭を乗せてすやすや寝てて。
なんかその絵は、うん。
今でもよく覚えてる。