第13章 空
「なぁ、やりたい仕事って何!?」
「は?なんでそんなことまで言わなきゃならないのさ」
「いいじゃん!谷地さんは言ってくれたぞ!」
「だからってなんで僕が…」
おもしろいなぁ、翔陽くんと蛍くんのコンビ。
次に会うときはもうみんな卒業してて、進路はばらばらだ。
この5人の空気感を、目に、胸に、焼き付けよう。
「翔陽、そんな無理に聞くことじゃない」
「研磨、まぁそうだけど、すっげーなー!って刺激になるだろ」
『………』
「博物館で働くには学芸員の資格が必要で、
学芸員の資格を取るには谷地さんの言葉を借りると大学へ行くのが近道なんだよ。
他の道もなくはないけど、 …はぁ疲れる」
「なんで疲れるんだよ!夢の話ってもっとこう話しててワクワクして元気が出てくるもんじゃねーの!?」
「それは聞き手の力量にもよるんじゃない、僕もそれを今知った」
「…ふ」
「研磨今笑ったな!」
翔陽くんは研磨くんになんでだよーとか言って、
研磨くんは翔陽うるさい、やめてよ なんて言ってる。
でもね、その表情はやっぱりちょっと嬉しそうで、他の誰と話してる時とも違うんだ。
「あ、そうだ影山は? 大学行くのか?」
「…俺は行かねーよ」
「だよな!おれも行かねー!」
「「「「………」」」」
ふっと思い出したように影山くんに問いかけて。
影山くんの返事はみんな、うん、っていうか。
でもそれと同じで、と言ったニュアンスを感じる翔陽くんの返しに、
みんなが何か言いたそうというか、心配そうというか。
もろもろをよく知ってるからこその沈黙が、生まれた。
「ねぇ日向、」
その沈黙をまず破ったのは蛍くんだった。