第13章 空
ー穂波sideー
「でもさ、大学ってなんで行くんだ?
谷地さんのその… 広告デザイン?の仕事すんのに必要なの?
こうもっとセンスとかそういうのでぐわぁーっと仕事きたりしねーの?」
センスとかでぐわぁーっと、か。
それも、あるだろうな。
でもそこに選ばれるセンスは本当に研ぎ澄まされた、秀でた、すんごいやつだ。
「そうだね、日向が言うみたいに希望する分野で活躍できる場合もごく稀にあると思う。
でもその場合って、いろんなことをすっ飛ばしてその才能が欲しいってことでしょ?
才能とかは一旦置いておいても、半年後の私なんてわざわざヘッドハントして雇おうなんて思えないよー」
「…だから大学行くの?」
「横道もあるだろうけど、直結した学びたいことも学べる。
自分次第で人脈も作れるかもしれない。実務体験も」
「………」
「日向にとっては遠回りに見えるかもしれないけど、私にとってはこの方が近い気がするの。
それが理由かな」
「なるほどな!山口も月島もそんな感じか?」
「…うーん、俺は谷地さんみたいに明確なビジョンはないけど、
そうだね、あと3年間くらいかな、もう少し視野を広げたいし、分野も広げたい。
それから選択肢も多く用意したいから、かな」
「………」
「単純に高卒と大卒だと受け入れの幅が違うのが今の社会だからさ」
「なるほどな!」
「………」
「………」
いいな、翔陽くん。
自分と一緒じゃなくても、なるほどな、と一旦受け止めれるのはわたし、すき。
翔陽くんは、次は蛍くんが答える番だと言わんばかりに蛍くんを見つめてる。
「…なに、まさか僕にも返事を求めてるの?」
「そーだよ、当たり前だろ!」
「……僕は将来やりたいと思ってる仕事に就きやすいんだよ。資格が取りやすい。
高卒でも地道に道がないわけではないけど、圧倒的な差がある。
行かせてもらえるなら当たり前に行っておくべき所。 …夢 …そのやりたい職に就くためにはね」
蛍くんは博物館の学芸員になりたいんだよね。
学芸員補という仕事も存在するけど、そこから学芸員になることも難しいし、
そもそも学芸員補と学芸員の需要の差が…… とかとか