第13章 空
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「なぁ研磨!トスあげて!」
「…えー」
練習を終え、自主練の時間に差し掛かる頃、
翔陽くんが体育館に残るのはもうずっと、いつものことなんだろう。
だだだっと研磨くんの方へ向かいそれから、大きな声でそう言った。
そして研磨くんの、えーも聞けた。
わたしとの会話ではあまりないから、
音駒のみんなや翔陽くんとのやり取りで聞けるのがたまらなくたまらない。
「…近寄るのか大声出すのかどっちかにすればいいのに」
「確かにツッキーそれ、言えてる!」
「今日家に人を呼ぶというのに自主練をする日向って…」
そんな翔陽くんと毎日たっぷり時間を過ごしてきた、
蛍くん、山口くん、仁花ちゃんの眼差しと言葉。
勝手にじーんと来たりして。
「穂波さん、ちょっと良い?」
『ん?うん、なぁに?』
「…部室行くから付いてきてくれない」
『はーい』
翔陽くんに連れていかれる研磨くんにちょっと外出てるねって伝えると、
ちょっとがーん…って顔をしながら、 ん。 と言った。
わたしを、翔陽くんから逃げるきっかけにしたかったんだと思う。
3本くらいやって、わたしのとこに、じゃないけど…
『…ふふ』
「ニヤけてる。孤爪さんのこと?」
『うん、ふふ… 』
「………部室、昨日掃除したから綺麗な状態だけどどうする?外で待ってる?」
『うん、外で待ってるよ?』
「…じゃあ、そこにいていくださいね。他の人に捕まってどっか行ったりしないでよ」
『……じゃあ、入る』
「……いいよ、待ってて」
『…はーい?』
まぁ汗拭いたりとかするだろうし、
確かに中に入れるわけにもいかないよね、などと思いながら返事をして。
学校の敷地の向こうに広がる青い空と緑深い山々を眺めて過ごした。