第13章 空
「…ちょっと待ってて、今電話しながらみてもいい?」
『ん? あ、本を? どうぞどうぞ。 …って、え?持ってきたの?』
「…うん。持ってきた。 これほんとに、挿絵がいいね。 そうだステッカー…」
『うん、ステッカー。なかなか、使うタイミングないかもしれないけど…』
「いやすごい嬉しい。 受験… 学校に持ってくものとか… 持ち歩くものに貼れる。
穂波さんのこと、いつだって思い出せるけど、やっぱ有形のものが持つ力はあるよね。
あのタンブラーとか… オフに出かける時は絶対カバンに入れてる」
『……ん、嬉しい。 わたしもね、蛍くんがくれたシュシュ今日も使ってるよ』
「…今日も?」
『うん、なんとなくいつも火曜と木曜に使っててね、あ、大学が始まってからね。
あ、そんな絶対!みたいな感じじゃないんだけど、その曜日にダンスのクラスがあって』
「………」
『けど今日は、今日もね、身につけたかったの。
そしたら、蛍くんから電話が来た。 …ふふっ』
「…普通にすごい嬉しい。 たまに使ってくれれば、くらいの気持ち…
いや気持ちとしてはもうずっと着けててよって感じだけど……
まぁ、良いや。 うん、嬉しい」
『………』
「それからヘアオイル…」
『あ、うん… 何度も迷ったんだけど…』
自分がいつも使っているヘアオイルを蛍くんにプレゼントするってなんか…
恥ずかしいような、烏滸がましいような、訳のわからない感じがして結構迷った。
「その心配は無用。嬉しくて仕方ない。
わたしを忘れないでって言われてるみたいで、
なんか、縛り付けられてるような、穂波さんの独占欲を感じて」
『にゃにゃっ 蛍くん何てことっ…』
「くっ… 笑 冗談です。 でも僕たちにしかわからないよね。
電話で話した、その会話の流れじゃないけど、そうなんでしょ?」
『…ん』
「…それが、嬉しい」
『…ねぇ、蛍くん、あの、さ……』
そんなに嬉しい嬉しい、言われたら
わたしもすごく嬉しい。
でも流石に、照れる……