第13章 空
水彩画で描かれた空と海のポストカード。
木や砂浜、それどころか雲さえも一切描かれていないのに、
空と海だとわかる、綺麗な絵。
ポストカードをそっと机に置き、
ラッピングされた包みに手を伸ばす。
ロンハーマンのフェイスタオルとタオルハンカチ。色はどちらもネイビー。
洋書の小さなタイプの恐竜図鑑。イラストや構成がとてもいい。
ただの図鑑というより、アート寄りのもの。
同じ出版社が出しているのだろう、同シリーズのステッカーブック。
それから、ヘアオイル。これだけは日本語のタグが付いている。
「…はぁ、ったく」
どこまで僕を絆す気なんだろう。
あくまでも締め付けのない、当たり障りのないもの。
誰からもらっても使いやすいもの。
それから僕の趣味に寄せたもの。
それから… 僕との会話を思い出してセレクトしたであろうもの。
それだけは、普通ならきっと選ばないもの。
もらう人、贈る人を選ぶもの。
穂波さん以外の女性からもらっても迷惑なだけな、もの。
こちらは夜の10時前。
向こうは朝の6時前。
…何曜日にいつ講義があるかなんて把握してない。
考えても無駄だ。
とりあえず着信を入れておこう。
いやでも、起きてるとわかってるとはいえ流石に早朝すぎるか…
手短にLINEしておこう。
…電話できないならできないで、
この気持ちを噛み締めて、次電話できる時を楽しみに、
今は今に集中すればいい。 勉強を、すればいいだけのこと。
そんなことを思いながら今日やろうと思っていた化学のテキストを机に広げる。