第12章 Hi!
「穂波ちゃん家出る前、ツムのほっぺにめっちゃ普通にキスしよったんすよ、穂波ちゃん」
「へぇ」
「またね、侑くん。大好き、身体に気を付けてね。ちゅっ、それからハグみたいな」
「…日本語にするとたいそうだけど、脳内がアメリカって捉えると、
別にそんな大袈裟なことじゃない気がするね」
「そうなんすよ、そんでツムはツムでもう、あばあばしてへんくて。
じゃあ、次また会うた時は、俺からするな。 よっ、久しぶり〜 会いたかったで いう気持ちのせて。
とか言うてるんすよ。
うわ、こいつ、俺とは別で関係しっかり築きよった、この人がたくさんおる一泊の限られた時間の中でって思いました」
「イラッとした?」
「…やや腹は立ったけど、でも別に。今思い出しても、もうそんな、ですね」
「そっか、いいね」
「……これがメシ食いながら話す力なんすか?」
「いや正直聞き上手がいてくれたら、食事は関係ないかもしれないけど」
「………」
「食べ物が一つ、そこにあるだけで、喋りやすい人は少なくないだろうしそれに、
それは聞く側にも当てはまる気がするな。 聞き上手にも、なりやすくない?」
「………」
「それでさ、治くん。そのジュレなんだけど。
もっと柔らかい方がいい? 崩れる感じ。
それとももっと硬め? ぷるんとした感じ。
今それその中間なんだけど」
「あ、そーっすね……」
それからジュレの硬さに関して、ケンさんとちょっと、話して。
ほいから一緒に皿とか片しながら考えた。。
いろんな食の世界があって。
いろんな機会、があって。
俺はやっぱ、よっ!やないけど、そんな軽い気持ちで暖簾くぐれるような、
大衆的な、庶民的な店がやりたいな、思う。
妥協はせんと、こだわり抜いた、庶民的な店。
一緒にできたら最高やけど、
できんでもたまに足伸ばして食べに来てくれたらそれだけで嬉しいんやろな、とか思う。